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▼休暇は突然やってくる


「リフレッシュ休暇…ですか」

 社会人となり早数年。
 確かにここ最近は有給休暇なるものを取ることなく与えられた会社カレンダーの通りに働き通しで、それでもそれが当たり前になっていた哀しきかな社畜気質へと変貌してしまった響は突然付与された休暇システムに呆然と呟いた。
 もちろん働き詰めになりたい訳ではない。ただ、来週から突然一週間もの空白を与えられてしまえばどうしていいのか分からないだけだ。

「いいじゃない、私なんて学生の夏休み期間に充てられたものだから何処に行っても人だらけだったわよ」

 唐突にして充てられる休暇に慌てて事務所へと戻り報告した。何事も滞りなく仕事を全うするには報告連絡相談の三つが大事だというのは社会人四年目の響だって分かっている。
 申し訳なさそうに伝えた響に対して背中を叩いたのは同僚の女性だ。

「どうせ私達なんて皆同じような仕事をしているんだし、急ぎの仕事ぐらいはしっかり引き継ぐわよ。折角だし羽を伸ばしてらっしゃいな」
「ありがとう」

 丁度時期良くボーナスも舞い込んできていることだしこれを機に海外旅行なんてものもいいかもしれない。パスポートは昨年同僚達と海外旅行に行ったおかげで期限もまだ余裕はある。
 良き同僚に恵まれもう一度ありがとうと響は微笑み、そしてその日の帰りはいつもと違い旅行代理店へと向かい―――

 世の中そんなに甘い訳はなかったことを思い知る。

 いかに平日だろうが、社会人が仕事だろうが直近でツアーなんてものに出会える事自体が稀なのだろう。
 代理店のカウンターで少しだけ考えたもののこのまま手ぶらでは帰りたくもないなあ、なんて思っていると丁度手前にある国内旅行のパンフレットを手にとった。

「ここ、見ていただきたいのですが」

 結局は国内の旅行へと目的地は大幅に変更となり、メインは温泉となったが何分風呂の好きな響にとって別段何も苦ではなく。
 一人だし折角だから長居もしてしまおうということで3泊4日で同じ宿をとりキャリー一つで向かうのだった。

 それが、彼女の一つ目の不運。

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