外見平凡中身非凡主人公総受け


○有栖
→焦げ茶の髪に朝焼け色の瞳。妙に庶民的スペックが高い村人A。こよなく平凡な人生を愛しているので目立つことを嫌い、業とモブになろうとしている。実は魔族で魔王の孫。
平凡なモブ顔。女の子にはモテないが美形な魔族の男にはモテる。

○ルイ
→勇者(仮)。剣技会で優勝し、勇者にと選ばれたのに勇者という名の傀儡にすがるばかりで動こうとしない人々に興味が持てず、面倒がって逃げ出した。伝説の勇者、ラインハルトの孫。
アッシュの髪にアイスブルーの瞳。

○ユエ・シャロン
→黒目黒髪、目元涼しげな東洋出身魔族。有栖のお目付け役で、魔王崇拝者。
ストレートで腰まである髪を後ろで一つに纏めている。


***

 どくりどくりと脈打っている。
 辛うじてそれが生きているのだと教えてくれた。でも本当に?本当にコレで生きていると言えるの?
 自分の呼吸音が耳鳴りのように響いてうるさい。うるさい。うるさくて聞こえないんだ。


 ――アリス


 やめろよ、呼ぶなよ。俺に構わないでくれ。
 どうして皆そうやって勝手に執着してくるんだ。おれは何も望んでやいやしないのに。
 濡れそぼった衣服がべたりと張り付く。生温かくてきもちわるい。はきそうだ。


 ―――お前が望むなら、私はそれを叶えよう


 五月蠅い。全ての原因が何を口走る。
 ぼろぼろと零れる涙がうっとおしくて噛みついてやりたくてもう全部ぐちゃぐちゃだった。
 
 それでも、どうしても失くしてしまうのは嫌だったから。

 

「・・・・・・・たすけて」



 結局おれはコイツの手をいつも取る。

 さいてーだ。















「ねぇ、魔王の家知ってる?」
「・・・・・・はぁ?」

 民宿兼酒場を営む職業柄、妙な客やら輩に絡まれることはざらである。そして此処は、魔王が支配するお膝元の隣町。人間と魔族の領地の国境である為、その類の事柄を訪ねにやって来るパーティも多くいらっしゃる。所謂、勇者様ご一行ってやつだ。
 しかしここまで露骨、いや適当な物言いをしてきた奴もいなかった。
 魔王というのは現在所在不明とされている。昔は、やってくる勇者を返り打ちにしては、少しは骨のある奴でも来ないのかと退屈し、だらけた生活をしていたのだが。数十年前、現れた伝説の勇者、ラインハルトに倒されたのがきっかけだった。たった一振りで負かされたことに呆気にとられ、次には嬉々として目を輝かせ、魔王業に勤しむことにしたらしい魔王により、世界は暗黒時代へと突入する。勇者に刺客を送ってはいい加減にしろと静かに激怒した勇者が来るのをウキウキと待っているという魔王に、部下の方が呆れ果て、勇者に同情したとか。
 ただ勇者に構って欲しいだけらしい魔王は放っておいて、その部下と協定を結んだラインハルトにより、平和が保たれてきた。
 それから月日は流れ、魔王不在という噂と、実際に最近その姿を見た者がいないことから、一部の魔族が協定を破り、人間の領地に侵入を始めた。彼等にとっては観光やらちょっとした好奇心のつもりらしいのだが、見慣れぬ姿に驚いた人間側は大袈裟にこれを取り沙汰し、魔王討伐を国王に嘆願。逝去したラインハルトの幼馴染みであり、魔王を直接知る王としては、まだ戦を起こすのは時期尚早だと首を振るが、民衆は納得をしない。仕方なく、形だけでもと作ったものが、魔王を討伐するのではなく、捜索するパーティだった。
 なのでその行方を探し、何組ものパーティがこの店を訪ねてきたのも事実だ。だが残念ながら俺はしがない店主で、昔ならいざ知らず。今は魔王の居場所なんて見当もつかない。正直、パーティのご一行が皆良きお客様ということもないので此方が知りたいくらいだった。だって教えれば帰ってくれるし、無駄に備品を破壊されたり尻を撫でられることもない。
 そこでハッとして、相手に胡乱な眼を向けていた自分を窘めた。いけないいけない。サービス業は笑顔が要なのだ。どんなお客にもホスピタリティの精神で対応しなければいけないのだ。人間も魔族も分け隔てなく。それがじいちゃんが経営していた時からの方針だった。
 グラスを磨いていた手が止まったのをまた世話しなく動かしつつ、曖昧な笑みを返す。
「さぁ・・・、以前は魔王城にいたらしいですが。今は所在不明らしくて」
「ふぅん」
 ふぅんて、お前。
 聞いた癖に随分と興味薄気である。呆れてから、改めて男の出で立ちを眺めた。
 一見ただの旅人、一般人と同じ至って普通な服装、荷物、装備・・・・・・・。ってまてまて可笑しいだろ。
「失礼ですけど、あの、ご職業は・・・・・」
「一応勇者?みたいのやってるよ」
「・・・・・、あれ免許とか陛下のご指名とかいりますよね」
 一応でなれるものではないし、詐称は重罪だ。子供だって知ってる。王の認証の他にも精霊が宿った伝説の剣を抜いたり、剣技会で優勝とか色々面倒な事柄があった気がする。が、自称勇者の腰元には何も下がっていないのだ。
「だから全部持ってるってば」
「でもあの、剣は何処に」
「抜いたその日に売ったけど」
「あ、成る程だからないんですねー・・・・・って、貴方正気ですか!」
 流石伝説の剣だよなー、見ろよこれとやけに重そうだなと見定めていた革袋にみちみちと詰まった金貨を見せられる。有り得ない。
 くらりと視界が揺らぎそうになる俺に、それを興味深そうにしげしげと眺めていた男は、更に爆弾発言をした。

「あんた、もしかして魔王だったりしない?」



 俺の勘ってよく当たるんだよねと暢気に発言した自称勇者の無責任な発言により、その場の空気は確かに凍った。
 後に俺はじいちゃん―――第27代目魔王、エイダ・クライストに愚痴ることになる。



 そんな数年前の、魔王な俺と勇者のルイが初めて出会った時の事だった。




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