それぞれの役割
あれから一人になっても、何となく頭から離れなかった。金になるからヤってんのかよ?都って、そういう奴か?まぁ家族の話なんかは聞いたこともない。いつも女の家を泊まり歩いてんのは単に女好きなだけかと思ってた。
つーか実際、都の事なんかちょっとも知らねぇな。家も知らねぇし家族の事も知らねぇし、そもそもアイツってどうやって生きてんだ。バイトもしてねぇのに金回り良く遊んで歩いてるようではあったけれども。
「……………」
何となく気になりすぎて電話を掛けてみる。
『もしもし?凌ちん?』
「あぁ。お前今……」
『ごめん、迎えに来てくんない?ちょっとヤバイ』
都の口から出る珍しい救助要請に、慌ててバイクの鍵掴まえてすぐに部屋を出た。バイクを走らせて言われた通りの公園に向かって都の姿を探すと、公衆トイレの側に投げ捨てられていた都の鞄や上着。
「っおい都!!」
慌てて閉ざされていたドアを殴ると、苦し気にえずいている都の声。
「あーごめん、ちょっと待って」
暫くして都が出てくると、特に何の変哲もない都の姿に内心ちょっとほっとした。
「大丈夫かよ?」
「あー多分、何か変なクスリ飲まされちったから逃げてきちゃった」
都がまた笑って見せて、思わず俺は都の胸ぐらを掴まえていた。
「てめェへらへら笑ってんじゃねぇよ!つーかやべぇならそもそも俺に言やいいだろうが!お前、何やってんだよ!」
「わぁ!ご、ごめんね?えへへ、ありがとぉ凌ちん」
だからもう、分かってんだろうが。そういう風に出来てんだって。足りないモンを埋める為につるんだりするんだろ。一人じゃどうにもならねぇから友達ってのが必要なんだろう。何もそれは俺だけじゃない。互いにだ。
「……泊めてやっから来いよ、早く乗れバカ」
「あー…いいの?迷惑でしょ?」
「いいから乗れって言ってんだろうが!殴んぞ!」
都が隠すなら、無理矢理にでも引き摺り出してやらなきゃならねぇのは俺の仕事なんだろう?そりゃまぁ仕方ない。引き受けるさ。
「え!凌ちん一人暮らししてんの?」
「おう」
「……暫く、泊めてくれたりって…しない?」
見やれば都は、申し訳なさそうに言う。
「いくらでも泊まりゃいいだろうが」
友達だろうがよ。
なんて、死んでも言ってはやらないけども。
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