UA36

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余し余され




来る日も来る日も、俺と都は口を利かなかった。都は普通に楽しそうにクラスの奴等とつるんでるし、俺には見向きもしなかった。別にそんなのは大した事じゃない。そもそもちょっと前まではいなかった奴だし、それが元に戻っただけじゃん。

「うわ、原ちゃんヤバ!何これスゲーじゃん!」
「だろ!スゲーの持ってきたんだよぅ」
「エロすぎじゃね?こんなん売ってんのかよ!」

けらけら、都の笑い声が耳について気に障る。

『もういいや』って、そう言っていた。『間違いだった』って、そう言っていた。そもそも住む世界が違う。都は有りのままで普通で、暴力もない。でも俺は違う。俺はそういう世界に生きてしまったんだから仕方ない。
でもピアス、返せてねぇままだ。つーか耳、裂けたのかよ?ならピアス返したって付けられねぇじゃん。別に、そんな事をするつもりなんかじゃなかった。

「じゃあ適当に二人一組作っておけよー」

午後の体育授業になると当然のように余される。あの日以来、都だけじゃなくてクラスの奴等も俺とは関わらなくなった。そりゃまぁ、怖ぇんだろう。耳朶ちぎっちまったし。

不意にどんっとぶつかれて見やれば、都が隣に立っていた。けれど俺からふいっと顔を背けて目も合わせやしない。その耳にはまだガーゼが張られていた。
言葉もなく目も合わせて貰えないまま、二人一組になってテニスのラリーを始めた。

心臓の奥が握り潰されるみたいに痛くて苦しかった。その痛みが何なのかも分からないけれど、ただぼんやりと適当に合わせておく。授業が終わると都はまたさっさと他の奴等の元に行ってしまって、また普段通りにへらへら笑っていた。

どうしろってんだよ。

別にもう今更、耳朶はくっつかねぇだろう。


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