遠距離片思い/ハリセブ教室の向こうに、黒い人がいた。
その人を僕は見つめるけど、
その人から僕が見つめられることはない。
「優秀だミスターマルフォイ。スリザリンに得点を差し上げよう。」
「ありがとうございます、先生。」
またマルフォイは微笑まれてる。
先生の視線を独占して。
いいな、僕もあんな風に…
「何をしている、ミスターポッター?」
「えっ?…あっ!」
先生を見ることに夢中で、自分の鍋をおろそかにしてしまった。
火加減を間違えた鍋から熱い液体が吹き出ている。
「すいません先生!今片付け…」
「馬鹿者」
鍋に伸ばそうとした手を掴まれる。
僕は思わず先生を見た。
「そんなやり方では怪我をするだけだ。下がっていろ。」
「あ…はい、先生…。」
僕は言い付け通り、先生の後ろで先生が片付けるのを見ていた。
てきぱきと手際がいい。
さすがだな、と思った。
「怪我は。」
「あっ、ありません。」
「そうか。一からやり直せ。」
それだけ言って、先生は他の生徒の所へ行ってしまった。
掴まれた手首をさすりながら、教科書を確認した。
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