13 魔法省の手紙

突き抜けるような青空を、触れれば弾力のありそうな雲が漂っている。

「よい天気じゃ」

校庭には、ついさっきすべての試験を終了した生徒たちが、思い思い解放感に浸っていた。試験期間だったあいだ、久しく耳にしていなかった子どもたちの笑い声は、湖面で反射する日差しのように輝く。石造りの窓辺から彼らを見守るダンブルドアの胸は、まるで宝箱を眺めるに似た幸福感で満たされていた。
手にしているのは、届いたばかりの一通の手紙。文末に魔法省の印が捺されている。

刹那、風が吹いた。青葉の匂いが香る。

ダンブルドアから一歩、足を引いた柱の影に立っていた彼女の前髪が、流れるように逆立った。すっと形の美しい眉は、むつかしそうにしかめられている。

「私が森で見たのは、ヴォルデモートだったのでしょうか」

彼女の声は引き締まっていて、静かだがよく通る。
「ハリーの額の傷跡は、あの夜以来、ずっと痛むみたいです」

ダンブルドアは手紙を畳むと、ローブのポケットにしまった。
微笑みを浮かべて、彼女を振り向く。

「今夜はハリーから目を離さないように」

ほとんど不機嫌な様子で、「万が一のことがあっても、透明マントを使われたら自信がありません」と眉を困らせる彼女に、ダンブルドアは悪怯れず、ますますおかしそうに微笑った。
「どちらに行かれるんですか」
「魔法省がわしを呼んでおる」
「こんなときに、外出されるのですか」
「緊急を要するそうじゃ」
「ダンブルドアは、まるでハリーを試そうとしているようです」

ひときわ強い風がふいた。
ダンブルドアの背中を突き押すように駆け抜けた風が彼女の髪を乱暴にかき乱していく。彼女はひとつも怯まず、目を逸らさない。
だが、そんな圧迫感のある空気もダンブルドアは、やわらかく受け流してしまう。

「明日には戻ろうぞ」

彼女がやがて、身体を傾けて頭をさげた。「お気をつけて…」
外で風にあおられ木々が、音を立てている。

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