24 太陽は何度でも

爽やかな風の穂先が、眠っている彼女の頬を撫ぜていく。目を覚ますと、彼女は自分の部屋のベッドの上にいた。身体を起こす際、左肩に痛みが走り、昨夜のことは夢ではないのだと教えてくれる。
フリットウィック先生の執務室から、どうやって戻ってきたのか、記憶にない。しかし、身体が少し、楽になっているような気がする。
開け放たれた窓のそばでは、カーテンが揺れていた。窓の向こうで、長かった夜が終わろうとしているところだった。


「シリウス、気をつけて」

窓に立ち、身を乗り出すシリウスの手を掴んで、彼女は言った。
外では、ハリーとハーマイオニーがバックビークに跨がり、シリウスを待っている。もしかしたら彼らが、ダンブルドアにけしかけられた若者なのだろう。
「あぁ」と返事をして、彼が笑う。学生だったころと同じ、快活な笑い方だった。
離れたくない、離したくない、と思う彼女に向かって、シリウスは笑ったまま、当たり前のように「またな」と言った。
頼りになる姿に、思わず彼女も噴き出してしまう。うん、とうなづき、そして手を離した。
バックビークが上昇し、屋上に消えたあと、シリウスをひとり乗せて星空に交じり、溶けていく。彼らが見えなくなっても、彼女はずっと外を眺めていた。

バックビークが飛び立った空は、すでに明るくなりはじめている。寝起きの顔に冷たい風がぶつかり、気持ちがよかった。
ふいに、ピーターの恨めしげな眼差しが、声が、頭に浮かんでは、消える。
彼女は、しかしそっと目を閉じるだけに止めた。太陽が昇り、暗闇が山の稜線の向こうへ吸い込まれていく。

それにしても、と自分のお腹に手を当てた。ひどい空腹感があった。なにが食べたいかな、なんてことをひさしぶりに考えながら、彼女は微笑んでいる。
優しく彼女を照らす星が、朝方の空で光った。

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