03 新入生歓迎会

(あ、いた)

ハリーは人知れず、息をのんだ。
隣のロン・ウィーズリーも、ハリーが新入生の頭の隙間から首を伸ばしているのは、自分と同じように、言葉を発するうえに歌まで唄っている、とんがり帽子を見るためだと思っているだろう。
ホグワーツのその大広間には、ハリーが夢にも見たことのない不思議で素晴らしい光景が、広がっていた。何千というろうそくが火を灯して空中に浮かび、天井は本物と見紛う夜空で覆われている。
四つの長テーブルにはすでに上級生たちが着席しており、段差を上がった上座にもう一つ長テーブルがあって、そこには先生たちが座っていた。

「あれ」とロンが能天気な声をあげた。“組み分け帽子”の歌がやんだ直後で、ハリーも手を叩いて拍手喝采していたところだ。
「誰だろう、あの人」
「え?」
「ほら、君にも見えるだろ?」壁ぎわのほうを顎で示す。赤毛の後ろ髪がぴょんと跳ねている。
もちろん、ハリーにも、大広間の壁ぎわに立っている人物が見えていた。間違いなく、あの嵐の夜、小屋で会った彼女だった。ハグリッドはホグワーツに行っても会えるかわからない、と言っていたけれど、また会えたのだ。
「あ、うん、ほんとだ」思わずロンに調子を合わせる。

「東洋人っぽいよね」
「そう見えるね」
「なんだかマグルみたい」
「たしかに、そうかも」

代々魔法族というロンほどではないが、上座にいる先生たちのローブの彩りと比べると、白のシャツブラウスは、魔法使いっぽくないとハリーも思った。

「先生なのかな。あんな若い先生がいるなんて、兄さんたちは言ってなかったけど」
「先生ではないみたいだよ」

隣に立っていたのが、ホグワーツの管理人、アーガス・フィルチだったせいもあって、彼女の若さはひときわ目を惹いた。
じわじわと集まる視線にもまるで無関心で、冷淡な雰囲気が、ますます異彩を放っている。
(なんだろう、この気持ち)
ハリーは、彼女を見ていると、未知なる世界に緊張でどうにかなりそうだった心臓が、大きな力で少しづつ落ち着いていくのを感じていた。なぜなのか、自分でもわからない。

(いったい、だれなんだろう)

そうして、彼女の正体は組み分けが無事に済んだあと、ダンブルドア校長が紹介してくれたことで、ようやく明らかになった。
それをグリフィンドール生の長テーブルに座りながら、ハリーは見ていた。

「彼女は、今年からホグワーツにきてくれることになった、たいへん優秀な人材じゃ」

全校生徒の注目を浴びた彼女が一瞬だけ、居心地の悪そうな顔をした。
「先生がたの手助けにもなるじゃろう。もちろん、生徒諸君の相談も請け負い、フィルチさんが放置していた花壇の世話もし、ホグワーツを彩り豊かにしてくれる。そして」
そこで、にっこり笑ったままのダンブルドアが、ロンの兄である、双子のウィーズリー兄弟を見据えた。ように見えた。
「悪戯っ子を野放しにせず、しっかり懲らしめてくれるはずじゃ。なにせ、優秀じゃから、心するように」
彼女がまた迷惑そうな顔をする。今度はなにか言いたげに、上座のダンブルドアを見やった。
一方で、ハリーの席の近くで、フレッド、ジョージのふたりが、ようやく好敵手を見つけたかのように、にやにやしている。
「よろずや?」とロンが囁いてきた。「なんでもやるんだ。よっぽど、優秀なんだろうね」
「しばらくは、ホグワーツの副管理人じゃ」ダンブルドアが晴れやかに任命している。

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