03 新入生歓迎会

「では、ホグワーツの新入生、入学おめでとう!」
ダンブルドアは腕を大きく広げ、みんなに会えるのがこのうえもない喜びだ、というように、にっこり笑った。
「歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。いきますぞ。 そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」
出席者全員が拍手し、歓声をあげる。ハリーは笑っていいのか悪いのか、まだわからなかった。
しかし、呆気にとられたのは一瞬で、目の前の溢れたご馳走にたちまち夢中になった。
ホグワーツでは食事の出し方も変わっている。テーブルに等間隔で並べられた、輝く金色の大皿の上に、食べ物が忽然と現れたのだ。

食事中、ハリーは、ロンたちと会話するとき以外にも顔を上げて、ときどき彼女に視線を送った。
ローストチキンを頬張ったあとだった。宙に浮かぶひだ襟服のゴーストと立ち話をしているらしい彼女が、大広間からいなくなっていた。
慌ててあたりを見回してみたが、姿が見当たらない。星空の下、全校生徒ぶんの雑談や食器のぶつかる音で、大広間は絶えず音の洪水を起こしていた。
「どうかした?」
ロンが、ハリーの様子に気付いて声をかけてくる。手がチキンの脂でてかてかに光っている。
「ううん」ハリーは食事に向き直った。「どこ行ったのかなって、あのひと」
「あのひと? …あ、ほんとだ。いなくなっちゃった」さきほどのハリーのように首を巡らせ、彼女の姿を探してみせる。

「相談にのってくれるって、宿題も手伝ってくれるのかな」
「あとで、訊いてみる?」

ハリーはぼんやりと、皿のポテトにフォークを刺しながら、またあの夜みたいに彼女とゆっくり話せたらいいな、と考えていた。
興奮が冷めないハリーに、小さく笑いかけてくれたひと。
あのとき感じた懐かしさを、ハリーは忘れられなかった。そっと独り占めするように、あの夜のことはいまも誰にも話さないでいる。

(いつの間に…)

デザートを食べ終わるころ、ふと見ると、彼女が元の場所に立っていた。
それから自分に気付いてほしくなって、彼女を見ていたハリーは、見たのだった。
でたらめな校歌を歌いながら揺れる、生徒たちの頭越しに。誰よりも楽しそうに指揮を取る上座のダンブルドアを、壁にもたれながら眺め、彼女は心地よさそうに微笑んでいる。
あの夜、自分に見せた笑顔とは違う穏やかな横顔を、ハリーは魂が抜けたみたいに、歌が終わるまでずっと、見ていた。


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