赤い騎士 | ナノ



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突如、ウイルスに冒され始めたパソコンが、大袈裟な程音をたてる。

目まぐるしい程、無数の数字と記号がディスプレイ上を駆け巡る。

これ、ほんとにやばくないか。

私が冷や汗で背筋が凍りそうになったとき、有人が動く気配がした。

気配は、近寄ってきている。



コンコン、―――――



「おい、ディル」

「どうかしたか、有人」

「お前の方こそ」



イエスと答える間もなく開いた扉の先で、リュカが警戒心丸出しで身を乗り出してきた。

こら、パソコンに吠えるんじゃない。

にしてもリュカは…この音を聞き取ったのか?

有人の部屋の隣だとしても、この豪邸の壁は厚い。

耳よくなったな、リュカ。



「リュカの様子がおかしかったんでな
………これは、ウイルス…か?」

「な、分かるのか?」



私を退かすようにしっしっと手で軽くあしらった有人は、

パソコンの前の椅子に腰掛け、早くも着替えた私服姿で足を組んだ。



「父さんが、機械系ががまったく扱えなくてな
この手のものは、幼い頃からいじくっている」

「ほう………」



カタカタと有人の指からキーボードを伝わって、ディスプレイ上に広がっていた記号が消えていく。

す、すげえ。

この御曹司、ただもんじゃないね。


頼もしいもんだな。


嗚呼、天才だから余計、護衛―――――私が頑張らなくちゃいけないのか。










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