No title | ナノ
『こんばんわー』

『いらっしゃいませ』


軽音部は、大会も何もないからか、あまり練習はない

発表の場はあるとしても、学園祭の出し物だけであって

日はあるから曲については、ゆっくり考えることになった

まだ入部するかを躊躇っている途中なのに、何故か凄く気持ちがいい

部室に集まり、他愛のない話で盛り上がる

いつも忙しく、中学生らしい生活が出来ていなかったあたしにとって、それはそれで満足している

たまに、ドラムがどうしても叩きたくなることはあるけど

吹奏楽とは違うスタイルに戸惑いながらも、きっとお世話になるだろう部員とお喋りをする


今日はサッカー部の練習もなく、早く帰っていたら、雷雷軒に寄ると言った円堂くんの一声で

何故か家には、いつのまにか人が集まっていた


『おいなまえ、餃子二人前だ』

『…あがりました、正剛さん』


お店の手伝いにも慣れてきた

みんなも、漸くあたしの働く姿に慣れたのか、普通に接してくれている


『監督、明日の練習なんですけど』

『早くしないと麺が伸びるぞ
話はそれからだ』


最近、サッカー部には新入部員が入った

一年生の希望者が多く、しょうがないからと経験者のみ、入部許可を出したらしい

すごい人気だ

やっぱり、日本一のチームは魅力があるんだろう


その中の一人が、宇都宮虎丸くん

みんなとも面識があるらしく、すぐ溶け込んだ子だ

ずば抜けたサッカーセンスに、サッカー初心者のあたしでさえも

思わず拍手をしてしまったほどだ


『はい、餃子』

『ありがとうございます!』

『大丈夫?そんなに食べれる?』

『こ、子ども扱いしないでくださいよ』

『だって子どもだし』


可愛い子だった





(あの頃とは違う自分が居た)



 


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