No title | ナノ


それから、約二ヶ月後の次の団欒


『父さん、母さん 話があるんだ』


またグラタン

一口食べ終わってから、フォークを置いた


―――無理しなくていいよ


『なまえ?』

『どうしたの、なまえ』


誤魔化さないでよ

さっき離婚届に印押してたでしょう


あたし、見たんだから

それに、もう嫌なの


『気を使ってばかりの家族は、もう辛いでしょ』


びくっと分かりやすい反応だった

それか、もう隠すのもやめたのだろうか


『あたしは、大丈夫だから』


安心したような表情でお互いを見合わせて

二人はフォークを置いた



食べ終わって、父さんは言った


『父さん、よく考えたらな
スティックだけ渡してもしょうがなかったんだ』


―――このドラムも、なまえにやる


『出来れば、父さんの夢、継いでほしいな』


父さんの夢はドラマーだった

母さんの夢は、ボーカルだった


そして、その言葉が父さんの最後だった






(愛しすぎるからこそ、距離ができてしまったんだ)






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