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吐き出す息の白さをなんとなく眺めながら、街灯と周辺の家の窓から零れている光を頼りに足を動かす。
冬だ。
そう他人事のように思った。
寒空は近そうに見えて、いつまでたっても手が届かない。
何だかもどかしい感じだ。
はーっと吐き出した白い息で、手袋ごと温めようと試みてみる。
今では毎日手袋とマフラーが手放せないのに、小さな頃は寒さなんて気にならないくらい、元気に遊んでいたのだから不思議なものだ。
昔のことばかり考えているなんて、何だか年寄り臭いかな。
ただ頭の中だけで流れていく回想やら、独り言。
一人で歩いているのだから、わざわざ口になんて出せば変な人だけど、誰にも気にされないのはそれはそれで悲しい。

「あ、」
「………」
「えっと、久しぶり…?」
「……ああ、」

少しペンキが剥げてしまっているけど、小さな頃に遊んだ思い出のある公園の遊具を通り過ぎた時、目の前に懐かしい人が映った。

―――――ああ、あきくんだ。

小さな頃の呼び名が、喉を通って外に出た。
それは反射にも近い反応で、それがまた久しぶりで懐かしかった。

「あきくん、部活帰り?」
「……全く変わんねえな、お前は」

まだそうやって呼ぶのか。
ああ、中学生の時も、そうやって言われたんだっけ。
やっぱり男の子だから、恥ずかしいのかなあ。
中学生の時から何度も気を付けてはいたのだけど、やっぱり身体に馴染んでしまった感覚は、そう簡単には消えないようだ。

「まあな
そーいうお前は……」
「えーっと、…雑用終わり、かな?」
「……また変なことに巻き込まれてんじゃねえだろうな」
「み、みんなより先生と仲が良いだけだよ…」
「それが面倒だって言ってんだろ…」

言葉って難しいなあ。
そう呟くと、またお前は相変わらずだと言われた。
なんで?
わたしだって、少しは背も伸びたし、ちょっとは頭も良くなったと思うんだけど。

「そういう意味じゃねえ」
「…うーん、?」
「……………分かんねえならいい」
「…なんかごめんね」

頭の中が単純なのか、わたしは小さな頃から不器用で、口下手で、それに人見知りという性格だった。
反対にあきくん―――――小中学校と一緒だった不動くんは、サッカーをやってるだけに器用だし、頭も良かったから、よくわたしのお世話というか、面倒をみてくれてた。
なんか、懐かしいなあ。

「あ、そうそう
わたしね、今コンビニでバイトしてるんだよ」
「バイト?……お前が?」
「うん
まだ人見知りは治ってないんだけどね、ちょっとは治す努力も必要だと思って」
「……」
「あきくんは?何かしてる?」
「サッカーしかしてねえよ」
「あ、そっか…推薦だったもんね」

サッカーしてるあきくん、かっこよかったなあ。
なまえは思い出し笑いが止まらなくて、気持ち悪いと冷たく言い放たれてしまった。
なんか、こーいうのも懐かしいかも。

「にしてもお前、今日はよくしゃべるな」
「え?そう?」
「なんだよ、俺が居なくてさみしかったか?」

きっとあきくんは、普段通りに冗談でそう言ったのだろう。
しかしわたしは、それをまに受けて聞いてしまった。
すると、何だか、今の今まで感じていた懐かしさが―――――

「うん、さみしかった」

確信に変わった。

「は?」
「そっか、わたしさみしかったんだ」

何言ってんだコイツ、と、また普段通りな少し冷めた顔で、あきくんはわたしを見ていた。
その時わたしはというと、最近感じていた懐かしさに納得したからなのか、無意識にスキップなんてしていて。
そうか、さみしかったんだ。

「あきくんのおかげで、やっとわかったよ
最近、ずーっともやもやしてたんだよね」
「………」
「あはは、何だかみんなに会いたくなってきちゃったなあ」
「…みんなと別でも大丈夫だって言ったのは、お前だからな」
「!うん、わかってる」
「でもよ………」

みんなが居なくて、さみしかったのは、お前だけじゃねえんだからな。

「……うん?」
「だぁああー!!!こんの鈍感バカが!いい加減気付きやがれ!」
「え、え?」

綺麗な字と不器用な絵と無愛想なプリクラが貼られた小さなメモ用紙をわたしの手に握らせたあきくんは、また昔のように少しだけわたしの前を歩き始めた。
嗚呼、やっぱりわたしはこの背中に守られているのが一番、落ち着くんだ。

その日、それから会話は無かったけど、あきくんはわたしの家の前まできちんと送り届けてくれた。
その時のわたしは、珍しく手袋もマフラーもしなくたって、平気だった。

だって、ここが暖かかったんだもの。





苦しんだら苦しんだだけ涙が溢れた




あきくんの綺麗な字で書かれた集合場所と時間。
弥谷くんと片倉くんの不器用な地図。
忍ちゃんの「なまえが居ないとわたしが嬉しくもない紅一点になっちゃうじゃないの!」と書かれたプリクラ。

何だか、その日まで
みんなが居なくても頑張れる気がした。










キーワードは懐かしい、幼い頃。
この子は元真帝国ですね。
管理人自身も、高校に入ってから、中学とかの友達に全く会えてないので
こうやって不動くんみたいに偶然を装って会いに行ったり、来られたりしてます(笑)
そんな友達がいることもまた、嬉しいですよね!

ちなみにこの企画では、管理人が普段書かないキャラに挑戦していますので、口調が不安定です…すみません

受験生応援企画第二弾、12/04/01までフリーです!


お題:ポピーを抱いてより


時松杏 12_03_11






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