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※豪炎寺真人成り代わり・女主



豪炎寺なまえは、久々の家族旅行で沖縄を訪れた。
一人っ子故に、両親に溺愛されて育っている自覚があるなまえだが、なまえもまた、両親がすきだった。
共働きで仕事が忙しく、家をあけるのもしばしば。
世間は宇宙人騒動とかで騒がしい時に不謹慎だとは思ったが、やっととれた休み。
愛する家族との時間を優先するのは当たり前だった。

なまえには同じ名字の同い年の友達がいる。
友達というよりも、戸籍上では従兄弟という関係であり、世間では名が知れた少年だった。
彼は幼少期からジュニアリーグ等で名を馳せた、サッカー少年であった。
お互い遠く離れた地に住んでいたのだが、同い年故に影響が強かったのか、彼に習ってなまえもサッカーを始めた。

しかしそんな彼が、何故目の前に居るのだろうか。

彼は、世間を騒がせている宇宙人騒動の鎮静化の為に動いている雷門中学サッカー部に所属していて、イナズマキャラバンとかいうやつでサッカーをしているはずなのに。

「しゅう、や?」
「奇遇だな、なまえ
こんなところで逢うなんて」
「う、うん、そうだね」

夫婦円満、仲の良い両親は二人で出掛けている。
と、いうよりも、なまえが気を遣って席を外してきたのだけど。
なまえは、いつものようにサッカーボールを抱えて、行くあてもなくただ海岸沿を歩いていた。
時たま、小さな子ども達に声を掛けられて、一緒に遊んだり、リフティングをしながら歩いてみたりしていた。
年季が入って薄汚れたそのサッカーボールは、動きを止めたなまえの脚から、彼―――豪炎寺修也の足元へ転がっていく。

「なまえ、サッカー楽しいか?」
「うん、楽しいよ修也」

双子、特に一卵性双生児はお互い喋らなくても意志疎通が出来たり、動きがシンクロしたりすることがあるという。
なまえと修也の場合は、異常な程仲が良く、異常な程一緒にいた時間が長いから、似たようなことが自然と出来るようになっていた。
だから、修也に何かがあったのだと感じとったなまえは、修也が自分から話し始めるまで、何も聞かないことにした。

「なまえ、頼みたいことがあるんだ」





場所は沖縄の深い森の中。
なまえは両親に少し遅くなると連絡を入れて、そのままケータイをオレンジのパーカーのポケットにしまった。
このパーカー、懐かしいなあ。
小さな頃から、従兄弟なのに瓜二つと言われてきたなまえと修也。
修也の影武者を担当することになったなまえは、何処から見ても、そっくりだった。

「本当にお嬢さん、大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です
任せてください」

鬼瓦がやる予定だった、修也の影武者役を、なまえがやることになったのである。
修也が頼んだ訳ではない。
修也は、雷門に無事戻ることが出来たら、一緒にキャラバンに参加してほしいと頼んだだけなのである。
つまり、そうなると必然的に影武者作戦を告げる必要がある。
それで、影武者作戦を知ったなまえは、何故か自ら名乗り出たのである。
鬼瓦は女の子に任せられないと何度も言ったのだが、なまえはサッカーで鍛えた自慢の脚があるから大丈夫だと言う。

「久々に逢って、修也がこんなことになってるなんて、知らなかった」
「…」
「わたし、修也のことは本当の兄弟みたいに思ってるから
大丈夫だよ、任せて」

修也も心配ではあったが、なまえへの信頼を頼りに自分に言い聞かせ、なんとか冷静さを保っていた。

さあ、出発の時。
敵は修也が一人になった瞬間を狙ってくるとみた。
合流地点へ、鬼瓦達と先に向かっていたなまえは、じっと辺りを警戒しながら見渡した。
妹を人質にとるなんて、なんて卑怯な手を使うんだ。
他人に心配をかけたくないと、修也は仲間にも知らせていないという。
可哀相だ。
修也も、夕香ちゃんも。
そんなことをしてまで、修也を手に入れようとする敵も。

「なまえくん」
「はい、行ってきます」

なまえは事前にアップは済ませておいてあった。
大丈夫、わたしはやれる。
なまえは試合前のいつものように、修也とお揃いのミサンガを触った。
なまえなりの、勝利のためのおまじないなのだ。
こうすると、修也が傍に居てくれるようで。
安心するのだ。
一つ深呼吸をしてから、修也と同じように深くフードを被って、なまえは走りだした。
女子リーグの絶対王者を舐めるなよ。
そう、強きに。
弱く出るな、わたしはやれるんだから。

指示通りの場所で、なまえは立ち止まった。
するとガシッと肩を掴まれて、なまえは無理矢理後ろを振り向かせられる。
嗚呼、良かった。
安堵の溜息を内に秘めて、なまえは笑って言ってやった。

「残念だったね、オジサン」

勝利の後の、挑発的な態度。
それこそ、なまえが絶対王者と言われるが故のこと。

**********


無事に雷門に合流することが出来た修也に続いて、なまえもフィールドに上がった。
部外者だから、何か言われたらどうしよう。
さっきまでの威勢は何処へやら。
そう、なまえは普段は普通の、少し引っ込み思案な女の子なのである。
ただフィールドに上がると、相手を挑発するようになるのだが。

しかしなまえの予想は外れ、監督らしい女性に着替えるように促された。
首を傾げたなまえに、修也が怪しげな笑みを浮かべた。
……言ってあるのか。
なんという用意周到さ。

監督らしい女性に言われて、予備のユニフォームを持ってきたマネージャーに連れられ、なまえは着替えを済ませ、あれよあれよと流されていくうちに試合に出された。
あれ、わたしの意思は?
そういえば、影武者作戦について聞く前に、修也に言われていたんだっけ。
肯定した覚えはないが、まあいいだろう。
旅行中は個人練習しか出来ていなかったから、いい機会だし試合に出てみるか。
半ば状況に流されながら、なまえはポジティブに考えたのである。
まあ、成るようにしかならないのだし。
そんななまえの様子をくみとったのか、修也が満足気に笑っていたのには、なまえは気付いていなかったのだが。

髪をワックスで固めて、肩の辺りで揃えてある後ろ髪を纏める。
試合用の赤いピンで前髪をとめ、フィールドに上がっていけば、誰かが息をのむ音が聞こえた。

「女子リーグの絶対王者、豪炎寺なまえ…!!」

フィールドを見渡すと、交代するらしい選手が、驚きと不安に満ちた表情で、なまえを見つめていた。
なまえは迷わず片手を挙げてみせた。
相手がタッチすれば、それは選手交代を意味する。
知らない人に任せるなんて、なまえだったら素直に頷きはしないのだが、その選手はすぐに返してくれた。
ああ、任された。
何処か、修也を連想させる力強いなまえの笑顔に、その選手は満足そうに頷いた。

「はじめましてで悪いんだけど
ちょっとの間、時間くれるかな?
絶対に、点をとってくるから」

その自信は何処から出てくるのか。
なまえはフィールドに入ると、味方に向かって大きな声で叫んだ。
それは、敵からすればムカつく程の挑発であった。
なまえの隣には、どちらかが言うまでもなく、当たり前のように修也が立っている。
似ている容姿の二人。
初めて逢ったはずのなまえだったが、彼と同様何処か安心出来るその力強い表情に、雷門イレブンは頷いた。
彼女は、やってくれる。
何故か、根拠はないのにそう思えてしまったのだ。

「さあ始めよう、」
「くっ 生意気な小娘が
その男と同じように、見逃してはやらんぞ!」
「それでいいさ、かかってきなよ」

デザームとかいう相手キーパーを挑発し、なまえはそれから一点をもぎ取ったのである。





「おかえり、豪炎寺!」
「! ああ!」

修也のことが鬼瓦に説明された。
事情を初めて知った雷門イレブンは、事件の解決と、久しぶりの友との再会を喜んでいた。
それからふと、誰かが声を上げる。

「ねえねえ!
豪炎寺なまえも、キャラバンに乗るの?」
「豪炎寺、なまえ…?」
「あ、……?」
「ああ、お前か!
さっきはありがとな!めっちゃ凄いシュートだったぜ!」
「あ、ありがとう…」

土方の後ろに隠れるように立っていたなまえは、駆け寄ってきたゴールキーパー―――円堂に促され、皆の輪に加わった。
あれよあれよと流されていくうちに、何故かなまえはゴールの前に立たされていた。
なまえ、シュートだ!とか聞こえるんだけど?
あれ、なんで?
わたしの仕事、終わったはずなんだけど?
疑問を残したまま、なまえは利き脚を大きく振り上げた。

「ファイア、トルネーッド!」

炎を纏ったボールは、一直線にゴールへと向かっていく。
その結果を、なまえは最後まで見れなかった。
何故ならば、

「すっげー!すっげーよッ!!
さすが豪炎寺なまえ!
いやあー、あたし本物見たの初めてだよー!」
「ン?え?なに?」

ゴールが決まる前に、なまえの視界は奪われていたからである。
なまえの視界に広がるのはピンク色。
ン?何が起こってるんだ?

「あたし、塔子!財前塔子!
よろしくな、なまえ!」
「あ、うん」

抱きつかれ、ピンク色の―――財前塔子がなまえを振り回しているからか、なまえの視界はブレブレ。
あー、目が回る。
塔子が一方的に話し始めた内容から、塔子はなまえの大ファンだったらしく、握手を求められた。
断る理由もないので、なまえは握手を受け入れると、塔子はますますご満悦。

「で、どうなんだよ?」
「どうって、なにが…?」
「キャラバンに乗るのか?」
「え?なんで?」

驚いた様子のなまえに、塔子も目を丸くした。
あれ、なんで驚かれてるんだ?
なまえは、試合だけ出るつもりだったのだが、どうやら周りは違ったらしい。
え、そんなこと急に言われても。
返答に行き詰まったなまえ。
そんな時、ナイスなタイミングでなまえのケータイが震えた。


パパ
――――――――――
なまえの好きなようにしなさい。


ママ
――――――――――
修也くんと一緒なら、安心だものね!


さっきの試合の中継でも観たのだろうか。
おいおい、やっぱりわたしの意思、ないんじゃないか。
苦笑を浮かべながら顔を上げると、いつのまにか目の前に居た修也が、珍しく声に出して笑っていた。

「もう、みんないつも勝手なんだから」
「いまさらだな」

外見が瓜二つで、笑い方も、シュートの仕方も、どことなく頼れる背中も、みんな同じ。
この二人を見ていると、双子なのかと誰しも一度は思ってしまった。
しかし彼らは、性格が少しだけ違うようだった。
新メンバーとなったなまえとコミュニケーションをとろうと、何人かが寄って行き、なまえも受け入れているのだが、見事に修也が遠ざけている。
全く関わらせないと、なまえに気付かれてしまうからだろうか。
会話が一段落したちょうどいいタイミングを見計らって、なまえの視線から外させるその仕草は、―――否、作業には慣れを感じさせる。
そんなことを知ってか知らずか、何の話題でも、必ず修也にふるなまえは、無意識に修也を意識しているのだろう。
お互いが何処か、人付き合いの苦手さをカバーするために、お互いを守っているのだろうか。
いや、違う。

「豪炎寺ばっかり、なまえをひとり占めすんなよー」
「なあなあ、豪炎寺と被るからさ、名前で呼んでいい?」
「なまえさん、もう一回、シュート受けさせてください!」
「なまえさんなまえさん!
こっちにスマイルください!」

お互い、お互いが大切なだけなのである。

「うん、いいよ」
「いや、ダメだ」





いま、君に見る




答えは正反対
否、意味は同じ










ひたすらスライディング土下座します、いや、させてください!
本当に遅くなってすみません!
なんかだらだら書いた割には内容がない!
そしてあんまりイトコンスキルを発動していないぞ豪炎寺!どういうことだ!
あ、わたしのせいか。

なまえちゃんは人見知り、豪炎寺は無口なおかげで、あんまり人付き合いが得意じゃない。
だから余計に仲良し。
とかいう勝手な設定を頭の中に作り上げた杏です。
女子リーグの絶対王者とか、勝手な設定も作りました。
真人くんのことあんまり知らないので、勝手にファイアトルネード使わせました。
いろいろ好き勝手やって、全然リクエストに沿えてないです。
本当に申し訳ないです。

こんなんで良かったらどうぞ貰ってやってください!
リクエスト、ありがとうございました!


お題:alkalismさまより


時松杏 11_10_12






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