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05 -部下の到着-





嗚呼、やっぱりリボーンの仕業か。
確かに、今この女の子は、自分に向かってボンゴレ10代目と言った。
綱吉に対してよく獄寺が10代目と呼ぶからか、綱吉の周りにはよく、綱吉が危ない職業の家柄なのかとか、そういうあだ名なのかととらえる人がいる。
しかし、綱吉はこの女の子のことは、知らない。
だから、絶対に冗談等ではなく、この危ない家庭教師絡みのことだろうと、綱吉は確信を持っていた。
そして、その確信は強ち間違ってはいなかった。



「こいつはみょうじなまえ、ボンゴレ門外顧問組織所属のマフィアだ」
「少しの間、日本で任務をこなすことになったんですが、生憎未成年なので部屋が借りられなくて寝泊りする場がなくて…
そしたらリボーンさんからお聞きしました!…10代目のお宅のお部屋を貸してくださるそうで」



よろしくお願いします、と綱吉に対して頭を下げたなまえに、訳が分からないと綱吉は声を張り上げる。
何、勝手に話を進めてるんだ。
と、思ったのも束の間、愛らしい目で尻尾があったら振ってるんじゃないかとでも思えるご機嫌な表情で見つめられたら、言葉は自然と出なかった。



「ツナ、昨日お前を狙っていたマフィアが居たのは気付いてたか?」
「え?」
「なまえはそんなダメダメなお前を救って闘ったんだぞ」



礼ぐらい言え、とリボーンの蹴りをくらった綱吉は、小さくなまえにありがとうと言った。
痛みに頭を抱えながらも、あの時見えた何かの影は、なまえが倒した敵なのかと、綱吉は考えていた。



「9代目がなまえを寄越したってことは、お前のことをボンゴレ10代目として認められたと同然のことだぞ、ツナ」



先程までのリボーンによるなまえの説明を思い出し、綱吉は頭をまた抱えた。


みょうじなまえ。
ボンゴレ門外顧問組織CHEDEF所属の生まれ乍らのマフィア、13歳、通り名は黒猫。
難易度が高いSランクの最年少成功経験があり、特にAランク以下の任務はたった一人でこなすらしい。
なまえほどの年代のマフィアは数えられるほどしかいないらしいが、SやAランクほどの難易度が高い任務は、大人でも難しいことから、どれだけなまえの腕がいいことが分かる。
そんな恐るべき経歴とは反対に、彼女は可憐な容姿を持っていた。
イタリアと日本のハーフらしく、陽に当たると美しく輝く金髪と何処迄も青く透き通るアドリア海のように澄んだ青い瞳は、いつか見たフランス人形のように可愛らしい。
細い線のような顔立ちは、氷のように整っていて、日本人とは掛け離れた美貌。
街を歩けば、100%誰もが目を疑う美しさとでも言うべきか。
本当に、お伽話から出てきてしまった人なのではないかと思うほどだ。



「そんなこと言われたって、オレはマフィアになんかなるつもりはないんだからな!」



何かあれば決まり文句のように口から出る言葉。
綱吉からすれば、非日常的なことが目の前で起こっている。
そんな時に、はいはいそうですかと、受け流すことが出来るほど、綱吉は肝が座っていないし、観音菩薩のように笑みを浮かべられるわけがないのだ。
まあ、奈々ならば笑って受け答えるだろうが、その辺の能天気な性格は受け継いでいない。
普通の人間なら、綱吉のようになって当然だ。


その普通を非日常的なことによって平気で覆すのが、この家庭教師なわけだが。


綱吉は、諦めの溜息を吐いた。





「あ、なまえちゃん、
さっきリボーンが教えたあいさつ、あれ嘘だからね」
「え?! そうなんですか?!!」
「(この子山本並の天然だー!)」






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