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聖寛
はい。えーっと…ハル兄は何にする?
(狢籐にニッコリ笑って返事を返して悠晶にも飲み物を尋ね)
悠晶
あー…うんオレも狢さんと同じで。
(努めて明るく振る舞う姿が痛々しい。狢籐を好きだと思う以前までの自分なら、きっと感傷に浸るなと激を飛ばしただろうと思う。なんせ連れ戻しにあの店まで行ったくらいだ。今自分が同じように狢籐と引き離されたら抜け殻になるだろうと考えつつ聖寛に気付かれぬようにこちらも出来るだけ普通に答え)
聖寛
はい。じゃあそっちで待っててね。
(グァテマラを戸棚から取り出しカップの用意をしてコーヒーメーカーに適量の水を注ぎ、コーヒーをセットしてカップを注ぎ口の真下へセットを終えスイッチを押した。数分もすれば、コーヒーのいい香りが部屋を満たし、やっぱりあの店のあの光景を思い出す。ちょっとだけあの頃に戻りたいと思ってしまった。嘗ての恋人は幸せだろうか…元気に過ごしているのだろうか…荒れてはいないだろうか…そんな事ばかりが脳裏を過る。三人分のコーヒーを淹れ終わると表情を引き締めミルクとシュガーポットをトレイに乗せリビングへ運んでいき)
悠晶
あの…アキは大丈夫ですか?オレはどうもそういうの疎くて…
(狢籐の隣へ座りながら尋ねてみて)
=◆=◆=
■□■
狢
ハァイ、ちみっこ。
随分つまんない部屋ねぇ…模様替えしましょう?カタログでも持ってくる?
(手を引かれて悪い気がするわけもなく、勝手に恋人繋ぎにして指を絡めながらも相手を見つめもせずにアキと会話しつつ。
我が物顔でソファに座り)
アイスティー、いやインスタントコーヒーでいいわ。
ガテマラある?グァテマラだっけ?
=◆=◆=
■□■
悠晶
はい。さ、行きましょ。
(からかう狢藤に乗っておどけたように手を差し出し慇懃に頭を垂れてみせ)
ふふ…冗談はさておき、行きましょ?聖寛が待ってますから。
(狢藤の腕を掴むとエレベーターに向かい乗り込むと、少し遅れて乗り込んだSP達と一緒に聖寛の住む階のボタンを押して、持っていたICカードをカードリーダーに差し込んだ後は聖寛の住む最上階の部屋までそう時間はかからずに到着し、ポーン…という軽快な電子音とともに扉が開く。SP達は荷物を運び入れ部屋に置くと、そのまま待たせたままだったエレベーターに乗り込み軽く会釈をすると扉を閉め階下へと降りて行った。手を引いたまま狢藤と聖寛が待っているであろうダイニングまでズンズンと進んで行き軽くノックをしてからダイニングの扉を開け)
聖寛つれてきたぞ。
聖寛
あぁ、ありがとうハル兄。狢さんこちらへどうぞ。あ、飲み物はどうします?コーヒーと紅茶、冷たいのはビールからジュースがありますよ?
(久しぶりにあのカフェの人と逢えて妙に気分が高揚する。彼の事も聞けるかもしれないが、何よりあの鬱屈した実家の人間以外と話せるのが嬉しかった。久しぶりに生きてるような気がする聖寛はあの時間、あの場所をどうして捨ててしまったのかと思うと胸が詰まり涙が零れそうになるのを誤魔化すように明るく狢藤に何を飲むか尋ね)
=◆=◆=
■□■
狢
(ゴツいSPにも、上位階級面した二人の姿にも動じることなく、車を地下駐車場に停め。
手鏡で軽くメイク直しと髪型を整えてから車を降り、待ち構えていたSP達に荷物の運搬を任せ)
悠晶兄さんとやら
さ、案内してちょうだい
(からかうようにアキ君の真似をしてみせ)
=◆=◆=
■□■
悠晶
…っ!?
(ドキッとした。格好は化粧したりして所謂オネエ系なのだが、今の目付きといい時々妙に男性の色気…というのか、それを感じる。そんなに長く一緒の時間を過ごしたわけではないのだけれど、なんというのか自分が雌になったような気分になるから困ってしまう悠晶だった。漸く聖寛の今の住居であるタワマンに着いた。もちろん聖寛はこんな豪奢なタワマンなぞ望んでないのだが、一度消息を絶った息子を籠の中で飼い殺しにする気なのだろう。コンシェルジュ…というには確かに狢藤の言う通り、SPさながらの屈強な強盗も裸足で逃げそうな風貌の男性がエントランスロビーのフロントにデン…と立っている。狢藤の言葉に頷きかけた時、車の窓をコンコンと不意にノックされ、別に悪い事をしたわけではないがドキドキしてウィンドウを開け応対すれば)
はい…すみません…すぐに荷物降ろして車出しますんで…って、えっ?聖寛?
聖寛
こんにちは。狢さん。荷物運ぶの手伝ってくれたんですか?
(ニコニコと笑ってあの頃のような聖寛の表情ではあるが、憔悴しているのははっきり分かる。愛想良く狢藤に挨拶をして荷物を運ぶのを手伝ってくれたのかと礼を延べつつ恐縮する。SPらしき黒服の男性が聖寛の傍に近付いてきて腕を引こうとしたのを悠晶が見て)
悠晶
おい…誰と誰が話してるか分かってやってんだろうな?
(あまり凄むことはない悠晶がこの時ばかりは吼えた。親の七光りもバリバリに使っている。SPも悠晶の事は知っていたようで、顔を見合せクイッと顎をしゃくってもう一人も下がらせペコリと頭を下げ後ろへ退いていき)
聖寛
もう今日はお仕事も終わりでしょ?いい加減解放してくれませんか?僕は悠晶兄さんと話したいんですよ。
(振り返りもせずに辛辣なまでの口調でSPに言い放つと、悠晶と狢藤にニコリと笑い)
狢さんパーキングはここの地下に…ほら…そこが入り口ですから、荷物はコンシェルジュに運ばせますから車を停めたらハル兄に部屋まで案内してもらってくださいね?お茶でもしましょ?
(悠晶は狢藤の方を向いてすまなそうな表情をして、付き合ってもらえないかと言外に伝え)
=◆=◆=
■□■
狢
あら、大胆?
ちみっ子のお使いの途中だから、返事は我慢シテネ?
でなきゃ、アタシ止められそうにないし
(獲物を捕らえた肉食獣のギラギラした強い目で相手を居抜き。
指示に従って車を動かして)
…コンシェルジュつか、あきらかにSPみたいなのがいるわね
コレ、アタシが荷物運ばなくてもいいカンジ???
=◆=◆=
■□■
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