そりゃないわ

「臨也、起きろ」

遠くで俺を呼ぶ声がする。

「臨也、おい、臨也」

ああなんて煩わしいんだろう。うるさいなぁ。

寝不足の頭にその声は実に耳障りだった。
21歳を境に完徹が身体に堪えるようになった気がする。俺のピークは19歳だったな…なんて、

「おい、いい加減に起きろ!!もう昼だぞ!!」
「〜っさいなぁ…」

あまりのその不愉快な大声に目を明けてみればあらまぁどうしたことだいこれは。

「おはよう臨也。早く遊ぼう」
「…意味が、わからないね」

ソファで寝てしまったらしい俺を覗き込む顔は間違いなく昨日我が家に訪ねてきた金髪の着物野郎だった。
うん、あれだろ?
お試しオトモダチの津軽くん。

「あー…おはよう。今何時?」
「13時17分23秒だ」
「あ、そう」

誰もそこまで細かく知りたいわけじゃなかったんだけど、なんてことは間違っても言わない。
だって彼気持ち悪いくらいに傷付きやすいんだよね…いやマジで。

「昨日は花札だったが今日は何にする?」

しかも律儀にオトモダチらしくオトモダチごっこを強要してくださるだから仕事熱心なことこの上ない。
誰だよこいつにトモダチ=遊ぶって教えた奴!

『ハァ?花札?アハハハハハハハハ!なに君服装に留まらず趣向まで和風って?しかも花札!』
『…………す…すまない』

軽い気持ちでバカにしてやった結果それからわかりやすい位に落ち込む彼を慰めるのに数時間費やしたのは記憶にまだ新しい。っていうか昨日のこだし。
それから漸く元気を取り戻した彼と明け方近くまで花札をしたわけだから本当泣けてくる。24にもなって俺は何しちゃってんだろうってね。
まぁそもそも"こんな"得体のしれないサービスを利用する辺りから間違っちゃってんだろうけど。

「あー…えっと、俺お腹空いたしさ、ほら津軽だって空いてるだろ?だからホラまずは遅い朝ごはんにでもしない?」

起き上がると部屋は静まり返っていた。もしかしなくてもこの津軽という男は俺が起きるまでテレビも点けずに待っていたのだろうか?
いやいや彼だってそこまでバカじゃ…

「じゃあトモダチとして俺に何か作ってくれ」
「え、」

ナニソレ。

思わずポカンとする俺に津軽は心無しかウキウキとした様子で言った。

「俺は好き嫌いはないから自由に作ってくれて構わない」
「……あ、そうですか」

仮にも俺は"客"なわけで、そういう辺りも尽くされるのかと思いきやそうきましたか…きましたね。

「あのー…津軽くん、いちを言っておくと俺別に料理は得意じゃないんだけど」
「大丈夫だ。だって俺達トモダチだろ?」
「……そうですね」

俺はこうして一つ学んだ。
トモダチという言葉は実に便利である、と。




づく…?





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