028 甘味
2014/05/06 21:04

三蔵と悟空は甘い物が好きだ。
一口に甘い物といっても、色々種類はある。三蔵は和菓子が、悟空は洋菓子がそれぞれ好みだったが、とにかく甘い物が好きだった。

「三蔵それ俺の饅頭!」
「うるせぇ、お前は何個も食っただろーが。一つぐらい寄越せ」
「まだ8個しか食ってねぇー!取るなー!」
「いい年して取り合いなんてやめてください。欲しければまた買ってきますよ」

笑顔で諌めても両者は一歩も譲らない。まるで世界でただひとつの饅頭だ、とでも言いたげに、それを取り合っている。
八戒はため息をついた。そして急須を片手に席を立つ。茶を淹れなおしてくるためだ。もし、それが終わってもまだ争っているようなら両者に再度教育を施さねばならない。
流しのある隣の部屋に入った。ふやけた茶葉を流しに捨てて新しい茶葉を急須に入れる。お湯を沸かしている最中も、隣の部屋から言い合いは聞こえてきた。

「だいたい三蔵は横暴だ!」
「何個も腹に納めてやがるくせに、ひとつくらい差し出そうとは思わねぇのかこの大喰らい猿!」
「思うわけねぇだろ!俺のだもん!」
「お前の、か?」
「おう!俺のだよ!八戒が俺に買ってきてくれたんだから、俺のだよ」
「お前は俺のものだから、即ちお前のものだという饅頭も俺のだろうが」
「……は?な、何言ってんだよ、三蔵……ん、…やめろよ、隣に八戒がいるだろ…………」
「…………」
「……………ッ!もうやめろってば、三蔵しつこい!!」



その後、執拗な三蔵のキスを振り切って悟空が隣の部屋を覗いたころには既に八戒の姿はなく、出切った茶が入った急須のみが流しに置かれていたのだった。





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