「失礼いたしました。まずはこの家のことからお話いたします」
双獅はスッと顔を上げ、神代家のことについて話はじめる。
「まず神代家とはその名の通り、『神様の代わり』になるのです」
「は?」
水城が驚いて口を開けると双獅は少し悲しそうな顔をした。
「水鈴様の場合、地の神が亡くなられたので、その代わりに水鈴様が地の神になられたのです」
「・・・つまりは、神様の跡継ぎってこと?」
「はい。ご理解が早いようで助かります」
「で、今度は私が神様になると?」
水城がそう言うと、双獅は笑顔で頷く。
「まだ亡くなってはいらっしゃらないのですが、恐らく後5年も持たないだろう、ということでしたので、私がご説明に参りました」
双獅は安心させるために、笑顔を浮かべているのだろうが、それが余計に水城の癇に障った。
「・・・っ・・・何で私なの!?」
急に現実味の無い話をされ、パニックに陥った水城は、声を荒げて双獅に怒鳴った
。
「私はまだこの世界でやりたいことたくさんあるのに・・・。神様が死ぬからこの世界の人間を殺すの!?そんなの神様のすることじゃない!」
「お気持ちはよくわかります。ですが、死ぬわけではないのです」
「こっちの世界にいなきゃ、死んだのと一緒だ!」
目に涙をためながら、双獅を睨む。
涙でよく見えないが、水城には何故か双獅が泣いているように見えた。
「私もかつて、そのように相手に怒ったことがございました」
双獅は水城を静かに見据える。
「私もこの人間界から選ばれたのです。今、この人間界を守っている神は、ほとんどが元人間なのです」
そんな、嘘でしょ・・・。
水城は小さく声を漏らす。
「すべて、神代家の者です。皆、自分の大好きな人間界を、大切な人を守るためにと、覚悟を決めて神になりました。確かにあなた様は、若い。その歳で神になろうという者は初めてでございます」
双獅は一度、言葉を区切り、立ち上がった。
静かに水城の側に立つ。
「あなたが神になられるまで、私たちが支えさせていただきます」
「そんなの・・・急に言われても困ります」
水城は俯いて首を横に振る。
「水城様・・・」
双獅は何も言わず、そっと水城を見守る。
「でも、私が神様にならないと、この世界が困るんですよね?」
ツゥ・・・と水城の頬に一筋、涙が伝う。
「だったら、私・・・神様になる。神様になって大切なこの世界を、大切な人達を守りたい!」
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