03 神代家の役割



「失礼いたしました。まずはこの家のことからお話いたします」



双獅はスッと顔を上げ、神代家のことについて話はじめる。

「まず神代家とはその名の通り、『神様の代わり』になるのです」

「は?」

水城が驚いて口を開けると双獅は少し悲しそうな顔をした。

「水鈴様の場合、地の神が亡くなられたので、その代わりに水鈴様が地の神になられたのです」

「・・・つまりは、神様の跡継ぎってこと?」

「はい。ご理解が早いようで助かります」

「で、今度は私が神様になると?」

水城がそう言うと、双獅は笑顔で頷く。

「まだ亡くなってはいらっしゃらないのですが、恐らく後5年も持たないだろう、ということでしたので、私がご説明に参りました」

双獅は安心させるために、笑顔を浮かべているのだろうが、それが余計に水城の癇に障った。

「・・・っ・・・何で私なの!?」

急に現実味の無い話をされ、パニックに陥った水城は、声を荒げて双獅に怒鳴った


「私はまだこの世界でやりたいことたくさんあるのに・・・。神様が死ぬからこの世界の人間を殺すの!?そんなの神様のすることじゃない!」

「お気持ちはよくわかります。ですが、死ぬわけではないのです」

「こっちの世界にいなきゃ、死んだのと一緒だ!」

目に涙をためながら、双獅を睨む。

涙でよく見えないが、水城には何故か双獅が泣いているように見えた。

「私もかつて、そのように相手に怒ったことがございました」

双獅は水城を静かに見据える。

「私もこの人間界から選ばれたのです。今、この人間界を守っている神は、ほとんどが元人間なのです」

そんな、嘘でしょ・・・。

水城は小さく声を漏らす。

「すべて、神代家の者です。皆、自分の大好きな人間界を、大切な人を守るためにと、覚悟を決めて神になりました。確かにあなた様は、若い。その歳で神になろうという者は初めてでございます」

双獅は一度、言葉を区切り、立ち上がった。

静かに水城の側に立つ。

「あなたが神になられるまで、私たちが支えさせていただきます」

「そんなの・・・急に言われても困ります」

水城は俯いて首を横に振る。

「水城様・・・」

双獅は何も言わず、そっと水城を見守る。

「でも、私が神様にならないと、この世界が困るんですよね?」

ツゥ・・・と水城の頬に一筋、涙が伝う。






「だったら、私・・・神様になる。神様になって大切なこの世界を、大切な人達を守りたい!」










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