「内海くんなら腐男子受けもガチなのに……」
「自分の事棚に上げ過ぎだし」

 そうでしたすみません。
 
「それよか不良×ビビリ平凡は!? いるって言ってたよねクラスに」
「やっぱ気になる?」

 にやって。にやって笑った!!
 眼鏡の奥の瞳が細まってちょっぴり悪っぽい。
 
「気にならなかったら……オレは腐男子じゃない!」
「そりゃそうだな」

 むしろそれ聞きに来たみたいなトコあんだけど。

「あれ堂島驚かそうと思って言ったようなもんだからなぁ」
「ええぇ」
「いや金髪にピアスいっぱい付けてる奴と気の弱そうな奴が席隣同士でさ」
「お、設定的には美味しそう」

 でも何故か顔を渋らせる内海くんに首を捻った。
 席隣って美味しいじゃない! 最初は平凡くんをパシリに使っちゃったりするあれ的展開狙いでしょ!?
 
「……見たら分かるよ、見たら」
「何なのそのモヤっと感を残すシメ方!」
「今度教室来いって」

 なんじゃぁそりゃぁ。
 焦らしプレイにも程がないですか!

「で、堂島ここ泊まってく?」
「え!? オレもエロゲーすんの!?」
「はあ? 何でエロゲ?」

 あれそういう話をしてたんじゃなかったっけ?
 徹夜でどの属性の女の子が好みなのかを100%真剣に語り明かすんじゃなかったっけ?
 
 あれれ?
 
「あ、ごめんそれは同室者さん達だった」
「ものっそお前の中でアイツ等が失礼な誤解を受けてるようだけどまぁいいか」

 内海くんはあっさりとルームメイトの弁明を諦めた。
 
 いいんだ!
 
「あーうー泊まりたいぃ。歩いて戻んのメンドくさいぃ。くそ廊下と階段エスカレータにしてくんないかなぁ」

 ソファでこうもダラダラしてると、このまま寝てしまいたくなるよね。
 
「階段はともかく廊下もエスカレータになったら部屋の出入りすんの一苦労だな」

 パソコンの電源を落としながら苦笑する。
 うん確かに。
 
 ずり落ちるようにソファから降りた。
 何時までもこうやってると本当に帰るの面倒になっちゃうからね。
 
「つかそんな戻んの嫌なら寝てきゃいいのに」
「そうしたいのは山々なんだけどもねぇ」

 親の教育が厳しいんだよね。親っていうか保護者っていうかルームメイトがっていうか。
 
 最初はさ、内海くんが良いって言うし泊まる気満々だったわけよ。
 一晩で語りつくせるとは到底思えないし。
 だけど稔に言ったら頑なに拒否された。
 
 頭を両手で鷲掴みにされて懇々と男の怖さを語られた。
 
 男子高生の頭の中って面白いのね、なんて呑気に思ったのは内緒です。
 
 いや私も今は男の子になってるわけだから襲われるとかないから。
 それ言うなら一番危険なの稔なんじゃないのっていう。
 
 過保護なお兄ちゃんだこと!!
 
 妹を男子校に放り込む実の姉よりよっぽどだよ。




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