秋の祭典スペシャル(中)


 目立つわけじゃない。平凡と言えばそうなんだろうけれど、良く見ればパーツ毎は整っていて実は綺麗なんだなって気づく。
 
 だけど非常識なほど顔の綺麗な人ばかりが揃う学園では完全に埋もれてしまうそれ。
 
 その事に本人が不満を抱いているとか、美形生徒会役員達を嫉んでるなんて事はなく。
 むしろ閉塞的で独特な学園にどこか馴染めなくって、そんな中でちやほやされている美形を冷めた目で斜めから見てる。
 
 普通に、普通に。目立たずただ平坦な高校生活を送りたい。
 そうなるはずだった。なんの努力をせずとも叶う筈だった。
 
 季節外れで型外れの転校生が来るまでは。
 
 偶然にも転校生――王道――と同じクラス、寮のルームメイトになってしまったばっかりに、彼と彼に惹き付けられた人達の騒動に巻き込まれていく。
 
 これぞ脇役主人公。最初は生徒会様方に全然相手にされなくて、それは本人の望むところだったわけだけれども、いつの間にやら王道を差し置いて総愛されになっているという。
 時に王道主さえも魅了しちゃったりなんかして。
 でも脇役主的にはめっちゃ不本意、みたいな。
 
「というわけでさぁ、ユーなっちゃいなよ!」

 語尾はむしろ星マークくらいの勢いで。
 ウィンクなんかかますくらいの茶目っ気で。
 
「堂島が会長の親衛隊やってくれんならな」

 ひぃ! 無理難題を押し付け返された!
 
 でも解ってる。解ってるよこの子。
 この学校が今必要としているものが何なのか誰よりも理解してる!
 
 
 というわけで、現在私が一緒にいるのは内海くんです。
 彼の部屋のソファにだらだらと寝転がって、私に背を向けてパソコンを弄っている内海くんに、グダグダと話しかけている。
 
 実は姉以外で腐的な話が出来る人って私の周囲には全くいなくて、そしてそれは内海くんも一緒で。
 初めて出会った同族に舞い上がった私達は、今晩は語り明かそうじゃないかと、酒場で意気投合したサラリーマンのようなテンションになった。
 
 どうやら内海くんは三人部屋らしいんだけど、同室者達は揃って友達の所に徹夜でゲームしに行っているらしい。
 エロゲーか。エロゲーじゃないだろうな君達。
 
 いやそこはまぁ置いといて(気になるけど)。
  
 そんで内海くんって第一印象は小柄で黒髪、黒縁眼鏡なもんだから王道主人公ルックに近い! とか思ったけどよくよく見ると脇役主人公っぽいなぁとか考え付いてしまったわけですよ。

 しかも内海くんなら、BL小説の話の流れとか知ってるもんだから、美形に迫られたりしたとき「何だこの展開! まさか俺はフラグを立てちゃったのか!?」みたいな慌て方してくれそうじゃない。
 知ってたのに回避出来なかった的な。
 
 そういうの想像しちゃったらもう止まんなくって。
 
 ああ楽しい。



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