東の拠点に戻って来てすぐに私は稔から事情を聞きながら手当てをした。
 
 なんと彼は不良達の仲間ではなかった。
 それどころか、彼等に喧嘩を売りに行ったのだとか。
 
 一週間前、稔の中学時代の友達が不良に暴行を加えられ入院するまでに至った。
 知らされた稔はやっとの事で犯人がいつも集まっている場所を探し出し、怒りの赴くままにあそこまで来た。
 
 既に彼等はウタによって瞬殺されていたのだけれど、一般人の稔は当然ウタ達のことなど知るはずも無く。
 私らこそが犯人と勘違いした……、とまぁそういう事らしい。
 
 
 つまりは稔ってばやられ損!
 
 稔があんなアホ共の仲間じゃないと分かって、こんな軽口が叩けるくらいに気分が浮上したよ!
 
 なーんてそこで話が終われば万々歳なんだけども、現実は厳しいんだぜ。
 
 店の奥の部屋で二人きり。重苦しい空気が流れています。
 
 稔の頬は腫れて大きく痣になってて、綺麗な顔が大層勿体無い事になってしまっている。
 多分口の中も切れてるんだろうな。

「稔……無謀過ぎだよ、一人でこんな事して。怪我治るまでご飯醤油攻めにしてやるんだから!」

 結構本気で怒ったつもり。かなりの責め苦だよ、醤油攻撃。
 だけど稔はポカンとしたまま暫らく私を見ていた。
 
 少しすると息を洩らすように笑い出し、ぐしゃぐしゃと髪を掻き乱した。
 
「お前ってホント分かんねぇ」
「何が」

 稔は疲れたように目を細める。
 片頬には無様にガーゼが貼られているのに、それでも彼はカッコいい。
 
 そっと伸びてきた手は私の肩に触れそうなギリギリの位置で止まった。

「稔?」
「………」

 何かを言い掛けて口を閉ざす。
 けれど本当に、本当に小さく「女だ……」と呟いたのが聞こえてしまった。
 
「みの――」

 コンコン
 
 ドアのノック音がした。
 
「カナちゃんもういい?」
「あ、はーい」

 慌てて救急セットをしまう。

「そうだ稔! 何も喋んないで。私に合わせてお願い!」

 みんな妙に勘がいいから変にヒント与えたくないんだ!
 稔が静かに頷いたのを見て、ショカさん達に入ってもらった。 



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