▼7 適当に一番近い空き教室に連れ込まれた。余程人に聞かれたくないらしい。 「結構前、俺の靴箱に変な手紙入ってただろ」 「白の封筒の人」 「何だそれ」 一ヶ月くらい前だったか。稔に古風かつ熱烈なラブレターが送られてきていた。 送り主は正体不明なので、紫の薔薇的なあれ風に言ってみました。 「で、その犯人が最近鬱陶しいんだよ」 「犯人って稔……、ていうか直接告白しに来たんだ!?」 うっそ全然知らなかった! やはり予想通り積極的な子だ。 可愛い系かな、可愛い系きぼんぬ。 上目遣いで「付き合ってください……!」とか。涙目だと尚好し。 いやもっと強引な子の可能性が高いか。「ねぇ付き合ってよ、いいでしょ?」って感じかな。 おおっと、いかん涎が。 「それでそれで、鬱陶しいとは」 「話しかけてきたのは一回だけなんだけど、至る所で監視されてるっつーか。何処に居ても視線感じるんだ」 「ストーカー!?」 「そんな感じ」 ストーカー受けとかダークホース過ぎる!! 全くのノーマークでしたよ!! 一体どんな子なの。 「どんな子どんな子? 可愛い?」 「はぁ!? ありえねぇ! あれはそんな――」 ガラガラガラ、ピシャーン! 耳がじーんとするくらいの音を立てて、しっかり閉めた戸が開いた。 自動じゃないから開けた人がいるわけですが。 稔がビクッと身体を震わせてさり気なく私の後ろに下がった。 何? 何なの? 勝手に入って来た人を見やる。 鍛えているらしい身体つきはがっしりしていて筋肉質だ。ジャージの上からでもよく分かる。 背も180cmを遥かに超える長身。 顔は整っている方で、ちょっと、いやかなり強面。学年は三年のようだ。 むきむき体育会系って感じ。 さっきから私が学年を尽く言い当てているのは、ジャージの色が学年によって違うからだよ。 「あの」 何か用ですか、と問おうとした。 もしかしたら体育委員の人で、サボってる私達を注意しにきたのかも。 「ちょっと貴方達、これはどういう事なのかしら。説明して頂戴」 ………………。 たっぷり十秒は間を空けてから、私は錆び付いて動きの頗る悪くなった機械よろしく、ぎこちない動きで後ろにいる稔を振り返った。 むしろ説明を要求したいのは私の方なのだから。 さっと稔に顔を逸らされ、理解した。 なるほど、この御方が手紙の人なのね。 確かに可愛いの? とか失言でした。 そんな次元の人じゃない。 お、お、オカマさん!? おねえまん!? えええ、ちょ、見た目は漢、心は乙女? ねぇこの人乙女なの? という事は受けなの? 受け入れる方なの、稔が攻めなの!? 無理じゃね? 難航不落じゃね? 「貴方ねぇ」 「へ?」 何故かカマ(仮)先輩は私に向かって話しかけてくる。 「方波見くんと同室だからってちょっと度が過ぎるんじゃない? ベタベタベタベタ、盛りのついた犬みたいに所構わず誘っちゃって」 「盛り……オレが、ですか……」 さっき会長を犬呼ばわりしたばっかだけども、自分が犬とか面と向かって言われると傷つく。 何この展開、私ってば生徒会サイドじゃなくてこっちの当て馬要員だったのぉー!? ものっそ謂れの無い嫉妬されてる! これが会長だったら萌えるのにこの人だとただただ怖いんですが! 本気で殺られそうで怖いんですが! 前 | 次 戻 |