適当に一番近い空き教室に連れ込まれた。余程人に聞かれたくないらしい。

「結構前、俺の靴箱に変な手紙入ってただろ」
「白の封筒の人」
「何だそれ」
 
 一ヶ月くらい前だったか。稔に古風かつ熱烈なラブレターが送られてきていた。
 送り主は正体不明なので、紫の薔薇的なあれ風に言ってみました。
 
「で、その犯人が最近鬱陶しいんだよ」
「犯人って稔……、ていうか直接告白しに来たんだ!?」

 うっそ全然知らなかった!
 やはり予想通り積極的な子だ。
 可愛い系かな、可愛い系きぼんぬ。
 
 上目遣いで「付き合ってください……!」とか。涙目だと尚好し。
 いやもっと強引な子の可能性が高いか。「ねぇ付き合ってよ、いいでしょ?」って感じかな。
 
 おおっと、いかん涎が。

「それでそれで、鬱陶しいとは」
「話しかけてきたのは一回だけなんだけど、至る所で監視されてるっつーか。何処に居ても視線感じるんだ」
「ストーカー!?」
「そんな感じ」

 ストーカー受けとかダークホース過ぎる!! 全くのノーマークでしたよ!!
 一体どんな子なの。

「どんな子どんな子? 可愛い?」
「はぁ!? ありえねぇ! あれはそんな――」

 ガラガラガラ、ピシャーン!

 耳がじーんとするくらいの音を立てて、しっかり閉めた戸が開いた。
 自動じゃないから開けた人がいるわけですが。
 
 稔がビクッと身体を震わせてさり気なく私の後ろに下がった。
 
 何? 何なの?
 
 勝手に入って来た人を見やる。
 鍛えているらしい身体つきはがっしりしていて筋肉質だ。ジャージの上からでもよく分かる。
 背も180cmを遥かに超える長身。
 顔は整っている方で、ちょっと、いやかなり強面。学年は三年のようだ。
 むきむき体育会系って感じ。
 
 さっきから私が学年を尽く言い当てているのは、ジャージの色が学年によって違うからだよ。
 
「あの」
 
 何か用ですか、と問おうとした。
 もしかしたら体育委員の人で、サボってる私達を注意しにきたのかも。
 
「ちょっと貴方達、これはどういう事なのかしら。説明して頂戴」

 ………………。
 
 たっぷり十秒は間を空けてから、私は錆び付いて動きの頗る悪くなった機械よろしく、ぎこちない動きで後ろにいる稔を振り返った。
 むしろ説明を要求したいのは私の方なのだから。
 さっと稔に顔を逸らされ、理解した。
 
 なるほど、この御方が手紙の人なのね。
 
 確かに可愛いの? とか失言でした。
 そんな次元の人じゃない。
 
 お、お、オカマさん!? おねえまん!?
 えええ、ちょ、見た目は漢、心は乙女?
 
 ねぇこの人乙女なの? という事は受けなの? 受け入れる方なの、稔が攻めなの!?
 無理じゃね? 難航不落じゃね?
 
「貴方ねぇ」
「へ?」

 何故かカマ(仮)先輩は私に向かって話しかけてくる。
 
「方波見くんと同室だからってちょっと度が過ぎるんじゃない? ベタベタベタベタ、盛りのついた犬みたいに所構わず誘っちゃって」
「盛り……オレが、ですか……」

 さっき会長を犬呼ばわりしたばっかだけども、自分が犬とか面と向かって言われると傷つく。
 何この展開、私ってば生徒会サイドじゃなくてこっちの当て馬要員だったのぉー!?
 ものっそ謂れの無い嫉妬されてる! これが会長だったら萌えるのにこの人だとただただ怖いんですが!
 本気で殺られそうで怖いんですが!



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