しかし後輩に幼いとか言われてるのに柚谷先輩は無表情だ。
 それどころか、心なしか理解してもらって嬉しそう。
 
 何この人可愛い。
 なんか先輩を見てたら誰かを彷彿とさせるなぁと思ってたら、分かった依澄だ。
 どっちも犬属性なんだ。
 
 依澄がおっとり人懐っこいゴールデンレトリーバーだとしたら、似てるけど見た目凛々しそうなラブラドールレトリーバーって感じ。
 
 そうか……会長は俺様じゃなくて無口ワンコか。本来ならばそれは書記の設定なんだけどな。仕方ないだろう。
 好きだしね無口ワンコ! 受けに尻尾振って纏わりつくのとか萌え萌えだよね!
 
 そう言えば知り合いにもう一人、ハスキーのような子がいるのを思い出した。
 
 私の周り犬属性多いな、ワンワン牧場?
 
「みのる?」

 ずっと押し黙ってるけど、どうしたんだろう。もっと先輩達と絡みなさいよ、折角のチャンスなのに。このお馬鹿さんが。
 
 
「俺どっちかっていうと猫派でさぁ、気持ち良さそうにゴロゴロ喉鳴らすのとかたまんねぇって思うけど。犬もいいよなぁ、尻尾振って喜ばれたりしたらさぁ……」
「は、はじ、め?」

 ぶつぶつ。独り言を呟き出した基の目がいってしまっていた。
 うっとりしつつも焦点が合ってない。柚谷先輩を映しているけど、どこも見ていないような。
 
 ていうか犬って言った。基にも会長は犬に見えるんだ。
 
「あっは! オリリンってば動物大好きだもんねー」
 
 そうなんだ。さすが幼馴染。
 時芽がにっこにっこ笑ってるから私も流しかけた。時芽の笑顔はデフォルトなのに。
 
 はっと気付いた時には、基は手をわきわきさせながら柚谷先輩ににじり寄っていた。

「撫でていいかな、毛わっしゃわっしゃやっていいかな、かな」
「レナ、じゃなくて基ぇー! それワンコじゃなくて先輩、生徒会長だから! 落ち着いて、毛じゃなくて髪!」
「駄目だ、撫で回してぇ……!」
「らめえぇぇっ!!」

 身体を張って基を止めにかかる。
 時芽は笑い転げて使い物にならない。
 
「いひひひ、らめぇって! らめぇってカナくん……!」
「うるさい! 混乱したんだよ!」
 
 私だって自分がこんな所で言う羽目なるとは思ってなかったよ!
 恥ずかしすぎて体中が熱い、変な汗かく。
 
 ずるずると基に引きづられていたけれど、ぴたりと動きが止まった。
 顔を上げると鷲尾先輩が基の頭を掴んで制止していた。
 
「ショックで落ち込んでるって事は無さそうだな」
 
 どうも私に対する言葉らしく、首を傾げてから、ああと気付いた。
 そうか風船のイタズラは私を狙ってやったのだろう。標的にされてショックを受けてもおかしくはない。
 
 でもどうしてか、気にはならなかった。
 鷲尾先輩は懐の深そうな男らしい表情で「よし」と笑う。
 
「もしもまた何かあったら直ぐおれらか風紀に言ってね」
「ん」

 柚谷先輩、んってなんだ。んって。
 それで通じると思っているらしい会長様は何も付け足さず、仕事があるからと行ってしまった。
 
 
 会長はワンコだった。副会長は腹黒美人が相場なんだけど、あれは……肝っ玉母さんって感じだったな。
 二人共キャラはこれでもかってほど立ってた。王道には程遠いのが残念だけれども。
 
 ワンコな会長×美形な稔。
 もしくはお母さん副会長×ワンコ会長?
 
 ありかもしれない。
 



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