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 寒いです! 今年一番の寒波がやって来ております!
 空は今にも雪が降りそうなどんより感です!
 
 そして私の心も同様にどんより中です。どんより警報発令中です。
 
「終わった……私の人生終わった……」

 実際に終わったのはテストだけどね。
 金曜の夕方、学校終わってから電車乗って地元に帰って、今日は転入希望先の高校まで来てテスト受けてたんだよ。
 
 しっかし今日の寒いこと。
 ガチガチ震えながらやって来た私を、同じく寒さに唇の色を悪くさせてる先生が迎え入れてくれて、二人で寒い寒い言いながら試験しました。
 
 休日だから空調止められてんだってさ!
 え、いや今日ぐらい……と先生も一応食い下がってくれたらしいんだけど、もうそういう設定になってるから変えられないんだってさ!
 
 コート来て、マフラーをひざ掛け代わりにして試験に挑んだよ。
 そっとカイロを手渡してくれた先生の優しさに涙ぐみました。
 
 そんな最悪の環境の中で数時間も良く耐えたよ私。それだけで偉いよ。
 というわけで、テストの結果はまるで期待できない。
 
 怖いよー、折角時芽や依澄に勉強教えてもらったのに、落ちたりしたら会わせる顔が無い。私のっぺらぼうになっちゃう!
 
 ううぅ、胃がキリキリする。
 そんな中でも、試験監督してくれてた先生(♂)と、「寒かっただろお疲れ」とコーヒーを手渡してた別の先生(♂)を穴が開きそうなくらいじっくり観察するのを忘れなかった私です。
 
 生物の先生と体育の先生と見た。
 
 爬虫類とかの世話があるからって生物準備室に籠る超インドア色白先生と、体動かすの大好きで生徒に人気のある先生。真逆な二人の間に起こるラブロマンス。
 
 などと、ホットココアを奢った転入希望の女子に妄想されていたなど、体育(仮)先生は夢にも思うまい。
 
 いやぁ、ココアの温かさが身に染みるわぁ。
 妄想の優良素材が早くも見つかってホクホクだわぁ。
 この学校に無事転入出来たらいいのになぁー。
 
 ちょっと気分を浮上させながら帰ろうとすると、外は雪がちらついていた。
 うわーこれ積もるのかな。
 
「香苗!」

 何故か切ない気持ちになりながら駅に向かって歩こうとしたら、校舎の影からひょっこりと空の色よりも綺麗な髪色の、背の高い美青年が現れた。ウタだ。
 
「ウター!」

 一人で寂しいし、テストの手応え無いしで塞ぎこみそうだった私の前に現れた天使!
 思わず抱き着きそうになったけど、さすがにそれはダメだと思い直して、駆け寄るだけにしておいた。
 
「迎えに来てくれたの?」
「うん、テストお疲れ」
「ありがとうウタ!」

 えへへ、ふふふ、と笑い合う私達。
 
「ナチュラルにおれの存在無いものとして会話すんのやめて?」

 ウタの傍に座り込んでいたおっきーがいた。
 うん、気づいてたけどね。まぁ良いかなと思って放っておいた。
 
「あれおっきー何でいるの? 出席日数足りなくて補講受けに来たの?」
「足りとるわ。ギリで」

 うわギリだって。まーねー、入院とかしてたもんねー。その理由が笑い草だけどねー。
 ほんと稔の友達とは思えないわ。稔はそういうとこ真面目なのに。
 
「おれは一人じゃ行けないっていうシャイボーイを連れてきてやったんだよ」

 シャイボーイ? ちらっとウタを見ると、首を振られた。
 なんのこってすか。意味分からん。ウタじゃなければ一人じゃ行けないって、誰の事よ。

 ニタニタ笑うオッキーが気持ち悪いので無視しようとしたんだけど、横を見ろとやたらと視線を寄越して来るので、さっきウタが出てきた所を覗き込んでみた。
 
「稔!?」

 そこに座り込んで身を隠していたのは稔だった。
 何故隠れているのか。というか
 
「何でここにいるの!?」

 稔は学校の寮にいるはずなのに。
 遠路はるばる、と言っても普通電車で一時間くらいだけど、もしかしてわざわざ私の様子見に来てくれた、とか?
 
「か、か、かたミィィィン!!」
「うわっ」
 
 これが感動せずにいられますか! 思わず今度こそ抱きついちゃったよ。
 
「かたミィィィン!!」
「分かったから」
「かたミィィィン!!」
「分かったっつってんだろ、伸ばすな蝉か!」

 そうです。木にくっついてる蝉になった気分です。
 
「ふえっくしょい!! あー寒すぎて鼻水出る」
「付けるなよ!?」

 稔はがばっと私の肩に手を置いて距離を保った。
 つけないよ、失礼な。ちょっと危なかっただけだよ。
 
「で、テストの手応えは?」
「出せる力は絞り出したよ。出せるだけはね……」
「なら大丈夫だろ。秋月に扱かれながら必死で勉強してたんだから」

 ずーん、と気落ちした私に気付いて、稔が頭を撫でながら慰めてくれた。
 そうかな、大丈夫かな。稔に言ってもらったらちょっと安心した。
 
 パンッ!!
 
 私の頭の上に置かれていた稔の手が急に弾かれて、驚いて上を見上げると、大層ご立腹なウタがいた。
 眉間に皺を寄せて、むうううっと不機嫌を顕わにしている。
 
「ウタ?」
「香苗、早く行こう」

 私の腕を引っ張り上げて立たせると、ウタはそのまま歩き出そうとする。
 
「え、ちょ、どこへ?」
「とりあえずファミレス入ろうぜ。さみー」

 あ、存在を忘れかけてたおっきーだ。あったかいファミレスに行くっていうのは大賛成だけど、なんだいこの雰囲気は。
 何で急にウタ怒っちゃったの?
 


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