冷蔵庫を開けたら見事に食材が入って無かったので、晩ご飯は食べに行くことにした。
 時芽と基は夕方に帰ったので稔と二人だ。
 
 私の料理の腕前がどうのって言ってたから、ご飯食べたいって言い出すかと思ってたのに。
 多分ウチに来る目的はとうの昔に記憶の彼方に葬り去れているのだろう。
 
 行先は近所のファミレス。高校生の懐事情なんて淋しいもんです。
 ファミレスで十分なんです。安定した味だからハズレもないしね。
 
「稔なにする? 私ミラノ風ドリア」
「それだけ? すぐ腹減るんじゃねぇ?」
「大丈夫。足りなかったらティラミスも食べるから」
「あ、そう」

 稔は季節限定のなんかを頼むようだ。
 
 注文を聞きに来たウエイトレスは、女子高生のバイトさんだったようで、稔を見てほんのり頬を赤らめていた。
 それに気付いてないのか見飽きてるのか、稔はスルー。
 
 潔癖ってわけじゃないんだけど、稔って女の子に対してドライなとこあるよなぁ。
 
 でも漫画雑誌のグラビアのページとかはしげしげと見てるし。
 これもある意味二次元にしか興味ないって事になるんだろうか。
 
「稔って女の子と付き合ったことあるの?」
「はぁ? なんだよ急に」
「いやぁちょっと気になって」
「……1回あるけど、すぐ別れた」
「マジで!? あるんだ! て、すぐってどのくらい?」

 彼女いないってのは前から聞いてたし、もう別れてるんだろうってのは分かるんだけど。
 すぐなんだ。意外だなぁ。
 
「……1週間ぐらい」
「それ、付き合った内に入るの?」
「一応、告白されてオッケーしたからそういう事なんじゃねぇの。あーもう思い出したくもないの蒸し返すな!」
「ご、ごめん」

 軽い気持ちで訊いたのに、地雷だったとは。
 
 稔って中学時代の話ほとんどしないから、どんな風だったのかあんまり想像できない。
 絶対モテモテだったはずなんだ。
 共学だったらしいし、女の子が放っておくわけないんだ。
 
 でも付き合ったのは1人だけで、しかも1週間。お試し期間にもなりゃしない。
 謎だ。友達が沖汐くんってだけでも謎だよね。
 
「そういう、堂島は、ないのか?」
「付き合った事? あるように見えますかね。ファーストキスも死守してますよ」
「そこまでは聞いてない」

 あらそう、それは失礼。
 それにしても何だろうね、この会話。この空気。
 ちょっとそわそわする。
 どうしてこうなった? あ、私が話題振ったせいか!
 
 稔は肘をたてた手に顔を乗せて、むっつりした表情のまま窓の外を眺めている。
 
 会話が途切れてしまったので、私は仕方なくメニューを見つめる。
 稔と二人でいてこういう微妙な沈黙ってこれまでそんな無かったなぁ。
 珍しいかも。
 



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