14


 
「堂島くん!」
「はいっ」

 今の今まで熟睡してた人がガバァッ! と勢いよく起き上がった。
 その振動で別れていた柿ピーがぐっちゃぐちゃに。先生は目を見開いて悲壮な表情になった。
 
「この際だから聞いておくよ……。もうこんな話出来るチャンス無いだろうし」

 何だろう。何聞かれるんだろう。ドキドキする。
 
「堂島くん……化学嫌いなの?」
「はい、大っ嫌いです! なくていいと常々思ってます!」

 うわぁ!! と化学の先生はまたテーブルに突っ伏してバタバタともがいた。
 揺れるテーブル。崩れる柿ピーの山。血の気が失せていく先生。
 もう、何が何やら。
 ていうか化学の先生、その質問前にもしたから。別にこんな話はいつだって出来るから。
 
「ほらほら皆さん、そろそろ私達も寝ないと」

 年長の女先生が立ち上がってみんなを促す。
 あ、ピーナッツ食べた。
 
 よし、今が好機とばかりに私と稔もそそくさと部屋を出て行った。
 
 
 外に出た所で、私達は衝撃的現場を目撃すした。
 
「なんでお前等ここいんの?」
「ていうかどうしてこんな真夜中にけんけんぱしてんの?」

 ログハウスで寝てるはずの時芽と基がいた。
 地面に丸をいっぱいかいて、けんけんぱしてた。
 私と稔がぽかんとしていると、二人はとてもいい笑顔で駆け寄ってきた。
 童心に返っているのか。幼き頃の穢れなき心に戻っているのか。何故今に。
 
「ああ、良かったカナくん無事戻ってきた。ちゃんと一人でトイレ行けた?」
「うん行けた行けた」

 何の話をしてるんだと稔が睨んでくる。
 
「あんま遅いから苦しんでるんじゃないかと思ったんだよぉ。痔で」
「なってない!! 遅かったのはお風呂も入ってたから!!」
「なぁんだ」

 若干残念そうなのはなんでだ時芽。
 てか何というデリケートな話題振ってくんだこらぁ!!
 
「カァナちゃん!」

 がばっといつもと同じように後ろから圧し掛かられた。勿論犯人は基。
 夜中なのにテンション高いなぁ。いや、これが夜中のテンションってやつか?
 
「カナちゃん、心配した」
「え?」

 首を捻って後ろを向くと、基は至近距離でにこーっと笑った。
 心配した……。
  怪我をしてすぐの時は興奮してるし痛みをあまり感じないという事もあるらしい。
 時間を置いてからじわじわと痛みが出てくるっていう。
 だから基と時芽は、夜中に起き出した私が今になって激しい痛みが出て来たんじゃないかと思って、わざわざ来てくれらしい。
 
 ちょっと何よもう、ときめいちゃうじゃないのよ。
 稔だけじゃなくて基も時芽も友達想い過ぎて胸がいっぱいだ。
 
 私の為に腹立てて高盛くん殴っちゃう基も、基の行動何てお見通しなのに止めたかった時芽も。
 私はいい人達に恵まれてるって実感中です。
 
 私ったら本当男子校での学校生活充実してんなぁ!!
 

 

end

'13.2.23^13.7.6



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