▼7 「飼い主になりたかったわけじゃないよ。別に強くなって欲しいなんて思ってなかった」 ぐっとウタが息を詰める。 慌てて言葉を切りそうになったけど、勢いで全部言ってしまわないと絶対もう伝える勇気なくなる。 「すぐにもういいって北さんのチームから抜けて欲しかった。ダメだったって言って私の所に戻ってきて欲しかった、……私はウタと、友達になりたかったよ」 でもウタはどんどん強くなってチームの中でも重要なメンバーになって行って。 気付いたら簡単に抜けられ無くなってた。 ウタが強くなりたいって理由は私にあるけど、私が離れていっても全然戻ってくれなかったのが悲しかった。 我が侭をぶつける形で思ってた事を全部ぶちまけて、目に溜まった涙をごしごしと拭き取る。 ううう、こういうのキャラじゃないのに。 黙ったままのウタをチラリと見上げてみると。 「う、ウタ!?」 泣いてた。私のなんか比じゃないくらいぼったばたと涙を落としている。 私がずっと喋ってたから邪魔しないようにしてたのか、声を出すのを我慢するみたいに歯を食いしばって。 「オレもなりたい、飼い主とか犬とか言われるんじゃなくて友達がいい……! オレ最初から全部間違えてたけど、でも香苗と一緒にいられるようにって」 ウタの手が彷徨うように伸びてきて私の腕を掴んだ。 「だから、あいつ嫌いだ」 ……ん? あいつ? 「後から出てきたくせに香苗に友達って言ってもらってた!」 あー! 稔の事かぁー! そういや皆に稔の事説明するとき、高校の友達って言ったなぁ。 え、なに嫉んでだと? それでさっきあんな稔を威嚇してたんだ? うわぁい、本当この子可愛いー。萌えるわー。 いやぁ中学の時は何事にもドライな子だったのに、こんな感情豊かになっちゃって。ふふふお母さん嬉しい。 「負けない! 香苗、オレとも友達になって!」 「え、あ、はい。喜んで!」 なんか主旨変わって来てますよウタさん! 私と友達になりたいから稔と対抗するんじゃなくて、稔と対抗するために私と友達になる、になってますよ! まぁいいけどさ。 ライバル心から徐々に恋心に変化するがいいわ。 稔を気にし過ぎるが故に、恋になっちゃえばいいわ。 ていうか勢いで友達宣言しちゃったけども、ウタが不良のままじゃ私は距離置くしかないんだけど。 「ウタ、私が言った事覚えてる? 私はウタに不良やめてもらいたいのよ」 「うんやめる」 「ちょ、おま、早っ!」 驚きすぎて語尾にwwwってつけそうになったわ。 なんという早い決断。僅かの悩む隙もなかったね。 これまで頑なにチームから抜けようとしなかったのに、どうしたっていうんだ。 ウタの心境の変化についてけないわ。 「オレ、香苗の友達になる」 「……そんな海賊王になるバリの気合顔で宣言するほどのものかね」 くわっ! みたいな。 ババーン! 的な。 目標低すぎてこっちが恥ずかしいわ。 まあいいか、涙も引っ込んだみたいだし。 「そういえば、なんで香苗ここにいるんだっけ?」 「ぎゃぁっ!」 ひぃ! そうだその問題が残ってた! あんなに、あんなに、唯先輩に頭下げてまでウタ回避してたのに、結局こうなってしまったんだった。 問題が逸れたせいですっかり忘れてたわ、私今ここの制服バッチリ着こなしておりますハイ。 「えと、ええっと、こ、コスプレするため?」 「………」 「ごめん、謝るからちゃんと説明するからその、コメントに困りましたって顔止めて泣きそう!」 友達に本気で痛い子を見る目をされると、こんなに傷つくものだったのか。 ああ、それにしても夏に稔に女だってバレてから、芋づる式になんか色々とボロが出て来てやしませんかね私の高校生活……。 前 | 次 戻 |