「なぁ堂島」
「なんだい方波見くん」
「いい加減そのニヤニヤした顔元に戻さないか?」

 えへへぇ、何の事だか分りませんなぁ。
 にやけてなんて、いますけどもね。
 
 いやね、さっき気付いたんだけど、そういや「宣伝忘れるなよ」と筧んちょに渡されていた、宣伝のチラシをすっかり配り忘れていたんですよ。
 だから教室に戻る前にビラ配りに専念した。
 
 稔が。
 
 私は近くの花壇に腰かけてボケーッとその様子を見てただけ。
 
 クラスの出し物が甘味どころなんだから、女の子をターゲットにして配れとお達しがありましてね。
 いつもはムサい男ばっかの生活だもんで、飢えた奴等が女子女子うっせぇんですよね。
 
 いいじゃない! 男ばっかでも! と言えるような雰囲気じゃなかったから素直に頷いたけども。
 
 まぁ女の子に配るなら私よりも、イケメンの稔から手渡された方が相手も喜ぶだろうと思って。
 そして私の予感は見事的中。
 
 誰も断らない。みんなちゃんとチラシ受け取ってくれるのよ。
 しかも大半の子は稔の顔ガン見。
 
 一体何人の子を虜にしたら気が済むのってくらいだった。
 
 やっぱモテモテじゃんね、稔ってば。
 その能力をこの学校でも如何なく発揮してほしいものだわ。
 
 でも女の子相手でもイイ絵が見れたなと大満足して、にやけてたってわけです。
 
「よ! かたミーの色男!」
「意味わかんねぇし」
「それ本気で言ってんなら、ただの嫌味だよ」

 自分がちやほやされる顔してるって自覚くらいあるだろうに。
 
 あれですか、外見で判断されてくないってやつですか。
 でも良く考えるとそれってかなり贅沢な話だよね。
 
 見た目から入るっていうのも別に悪い事じゃないと思うんだけど、まぁそれだけってのはやっぱ気分良くはないか。
 
 罪作りなイケメンも大変だねぇ。
 
 にやけていると稔は足を速めてさっさと歩いて行ってしまった。
 
 あらやだよぉ照れちゃって。
 
 つんって人差し指で彼の背中を突き刺す。
 そのタイミングを見計らったかのように稔が急に足を止めたものだから。
 
 グキッ
 
「にゃあぁぁぁっ!! ゆびが、指がぁっ! バルス!? バルスなの!?」
「あ? 何言ってんだ堂島」

 い、痛さのあまり取り乱しました……。
 刺そうとしてた私も私だけど、急ブレーキかけた稔も悪いよね。
 
「それでいきなりどうしたの?」
「いやアレ」

 稔の視線の向こうには人だかりがあった。
 しかも私等のクラスの前だ。
 
 何だろう、みんな教室の中を覗き込んでるようだけれど。
 
 よく見ると女の子達が多い? 若干頬を赤らめてうっとりしていなくもない?
 いや、どうだろう。
 私ちょっとさっきの稔ので女の子見る目にフィルターかかってるからなぁ。
 
 でもやっぱそれ抜きにしても色めき立っているような気がする。
 
「どういう状況? 時芽と基が脱いで女の子誘惑してんのかな」
「やめろ……、誘惑は無くても脱ぎはしそうでシャレになんねぇよ」

 うん。実際脱いでたら色めき立つ前に悲鳴が轟くだろうしね。
 人だかりどころか、みんな走って逃げてくに違いない。
 
 そんな事になってたら何の躊躇いもなく私は写メりますが。
 チェキッ!
 


|


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -