ふぅ。洗濯物を全て仕舞い終わって方波見くんを呼んだ。
 彼は私が葛藤している間リビングのソファに座ってテレビを見ていたようです。
 
「ごめんなー、かなり散らかってたから片してた。えーと、オレが窓側のベッドをずっと使ってたから方波見くんこっちね。一応仕切れるようになってるから」
 
 今は壁に纏められている折れ戸をざーっとスライドさせれば部屋を二つに区切れる。
 完全に二部屋に見せるのは無理だけど、これで寝てる間の無防備な姿は遮断出来るわけだ。

 こんな綺麗な男の子がいる横でぐーすか眠るの恥ずかぴーとか思う、まだまだ尻の青い香苗15歳の春。
 
「で、荷物が着たらそっちの引き出し使って」
「分かった、ありがと」
「あとは…何か聞いときたい事とかある?」

 すると方波見くんはぐるりと部屋を見渡して、暫らく思案していたけど、あ! と声をあげた。
 私を見てニヤッと笑う。
 うわぁい、性格悪そうって感じなのにカッコいいよ。
 
「堂島って男だよな?」
 
 ドキィッ!!
 そんな効果音つきで、心臓が口から出てくるかと思った!
 ばっくばっく言ってるんですが。
 
 バレた? バレた!? まさかリビングにブラジャーでも落ちてましたか!?
 
 しかしニヤニヤとしている方波見くんは、核心をついたというよりからかってる?
 
 直感ですが。何となくだけど、そうかなー、それっぽいなー、そうであってほしいなー。
 そう願って「どういう意味」と不機嫌に見えるように聞き返してみた。
 
「よく間違えられねぇ? 職員室で見たとき女がいる! ってマジ驚いたし」

 そんな事思われてたのかぁー!
 そうとは知らず、のほほんと妄想しまくりながら挨拶してたよ私。
 
「オレなんかに騙されるなんてまだまだ甘いな方波見くん! この学校にはくりくりっとしてて、きゅるっな子がいっぱいいる!」
「意味分かんねぇんだけど。つーかお前騙すつもりだったんかよ」
「要するにオレなんかより美少女な美少年がうようよしてるよって話」
「無視? そこスルー? ……まあいいけど、なんか女にしか見えない男って残念な気がしなくもないな」

 なんで!? そこは喜ぼうよ!
 私なんてこの一ヵ月半でどれだけの人に何回すれ違いざま抱き付きそうになったと思ってんの!?
 
 腐女子フィルター抜きにしても、やっぱり可愛らしいものや綺麗なものを愛でてると癒されるものです。撫で繰り回したくなるのは人間の性です。
 可愛いは正義。
 
「なにそれ、オレも残念っ子に含まれてんの」
「さあどうだろうな」
 
 いやしかし。今の何気ない会話で私は方波見くんがノン気である事を目敏く察しました。
 
 ノン気の受けが攻めによって同性愛に堕ちていくのはこれ定石ですよね。
 相手が同性であるが故に最初は相手や自分の気持ちが認められないんだけど、いつしかそれを愛が上回るというなんと素晴らしい。
 
 
 男子校なんだけど、あまりにも容姿が女の子のそれだから、一瞬テンション上がったところでやっぱり男だという現実を突きつけられた時にショックだと、複雑そうに顔を歪めた方波見くんの肩をぽんと叩いた。
 
「方波見くんも十分美人さんだよ!」

 激しくデコピンされました。
 人の事女にしか見えないとか言っておいて(いや実際女なんだけど)ヒドくね?ヒドくなくない?






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