開いていたドアからひょこりと顔を覗かせて中を窺った。
 
 どうして他クラスって入り辛いんだろうね。
 透明なバリアでも張ってるんじゃないだろうか。
 
 今私は依澄のクラスに来ています。
 生徒会室からの帰り際、関西弁先輩(名前聞きそびれた)からこのクラスに書類持って行って欲しいって頼まれてしまいまして。
 
 イケメンからの頼みごとを断れるほど女を捨てきれなかった私。
 
 べ、別に、先輩のためなんかじゃないんだからね! ちょっと依澄に用事があったから、そのついでなんだからね!
 
 とか言えるほどのツンデレには成りきれなかった私。
 
 自分のスキルの低さにしょんぼりしながらここまで来ました。
 
「お前は……!」

 なんだかまるで、遊び人だと思って見下してた人が、実は南町奉行所の偉い人だったと気付いた時みたいな驚き方をする人がいた。
 
 高盛くんだった。
 
「わぁー久しぶりぃー! 元気だった? ちゃんとハンカチとティッシュ持ってる?」

 実はこの間廊下で見かけたからそんなに久しぶり感はないんだけど、よく考えてみたら話をするのって二学期入ってから初めてなんだよね。
 
 にこにこと親しげに近寄った私を、高盛くんはお得意の威嚇で迎えてくれた。
 
「持ってる! てか何でお前がここいんだよ!?」

 わぁ、一向に懐いてくれないこの猫。
 でもちゃんと質問に答えてくれる本当良い子。
 ティッシュを携帯してる几帳面な子。
 
「依澄……えぇと平良いる?」
「あぁ? いやいないみたいだけど」
「うん見れば分かるよ」
「ナメてんのか!?」

 やだなぁ。そんなわけないじゃん。おちょくってるだけだよー。
 
「何大きい声出してんの高盛?」

 まぁいつもの事と言えばいつもの事なんだけど。
 
 冷静な口調で声を掛けてきた男の子には見覚えがあった。
 平凡っ子だ。
 内海くんが不良×ビビリ平凡がいると私を騙ったあの子だ。
 
 全然ビビってないじゃないのさ。
 相手が高盛くんならビビりようもないかもだけど。
 
 外見は本当に普通の男子高校生の平均値って感じだ。
 オシャレに気を使ってる風でもないけど、全く手入れしてないわけでもない。
 背も私と同じくらいかな?
 
 いやぁそれにしても
 
「なんだ、高盛って板宿先輩以外にもちゃんと親しい奴っていたんだな」

 セリフ奪われたなう!!
 心の中でツイートしようとした言葉そのまんま言われてしまった。
 
 やっぱ誰から見ても高盛くんって板宿先輩厨なんだね。
 
「それはオレのセリフだよ。高盛くんに友達がいたなんてねぇ。クラスで孤立してるんじゃないかって心配してたんだけど、良かった良かった」
「堂島お前マジで一回ぶっ飛ばすぞ」
「顔に傷が残ったら責任取って一生面倒見てね!」
「顔の傷は男の勲章だ!」

 ぶふっ!!
 なんという斜め上のツッコミ。
 お前は女か! って返ってくると思ってたのに。
 
 勲章って、それきっとヤのつく業界の方の話だよ!
 堪え切れず笑っていると、高盛くんの友達も同じように身体を震わせていた。
 
「きょ……今日はこのくらいにしといてあげるよ。はい、これ平良か内海くんに渡して」

 あぁダメだ。なんだかすごく高盛くんの存在が今はツボにはまる。
 ずっと会話続けてたら笑い過ぎて酸欠になりそう。
 
「じゃあね高盛くん。友情を……大切に!」
「うるせぇよ!!」

 友情パワーを馬鹿にするもんじゃない。
 少年漫画だったらたとえ敵として出てきたキャラでも、友達になろうって手を差し伸べた相手は大抵寝返ってくれるじゃない。
 
 ピンチに颯爽と現れて助けてくれたりするじゃない。
 
 まぁそういうキャラって高確率で死んじゃうけどね!
 

 

end

'12.2.15^12.4.7
 


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