跳ね起きた七海は、辺りが夕日を反射して茜色になっている事に驚き、次に部屋が綺麗に片付いている事に呆然とし、最後に隣で勇人の肉体が寝転がっているのを見て安堵した。

 手は負傷しているけれどそれ以外は夜のままだ。まだ隼人の魂と繋がっている証拠だ。

「はやと……」
「なんだ」
「ぎゃぁーっ!!」

 名を呼んだと同時にぱちりと目を開けた隼人に驚き、距離を取ろうと後退するとドンと壁に背中を打ちつけた。
 
「人の顔見て絶叫するとは失礼な奴だな」
「するよ、今のタイミングは絶対する! ……て何?」

 前触れ無く隼人が七海の首に指を添えた。長く七海とは違い骨ばった指がそっと労わるように撫でる。

 眉間に皺を寄せた隼人が何を見ているのか理解するのに時間が掛かった。

「別にそんな痛くないって」
「……治ったところだったのに」
「そうだけどね」

 七海の首に残るのは索条痕。指の痕がくっきりと残っている。勇人につけられたものだ。一度目は隼人がつけたというのに嫌そうに顔を歪めたのが可笑しかった。

「なんて和んでる場合じゃない。手見せて」

 隼人の手の甲は広範囲に渡って火傷を負っていた。

「足だ。確か足もだったよね!?」

 ズボンを手繰り上げればこちらも痛々しい怪我をしている。よく見ればズボンにも赤く滲み込んでいた。

「うわぁ……何で平気そうにしてんの」
「別に大したことない」
「そんなわけないでしょ。ちょっと薬箱取ってくる」
「ウッソあれで終わり? 有り得ないんだけど。ベッドの上っていう美味しい設定はガン無視なの!?」

 僅かに隙間があったドアの外から漏れてきた声に腰を浮かせた七海と隼人は顔を見合わせた。よく見ればそこから目が部屋の中を覗き込んでいて不気味だ。
 
 壁に身体をくっつけて、七海の部屋に聞き耳を立てている朝陽がそこにいた。

 見つかるとハッと身を固くしたけれど、それは一瞬ですぐに開き直った。

「痒い所に手が届く。ご存知気配りお姉さんこと朝陽様が薬箱持ってきてあげたわよー」

 勢いよくドアを全開にして堂々と入ってくる。眠り続けていた七海達が怪我をしている事に気付いた朝陽は薬箱を取りに行き、戻った時には二人は目覚めて何やら親密そうに話をしていたから入れず盗み聞きをしていた。

 だがよく聞いてみれば内容は全くネタになりそうも無いもので思わず文句を言ってしまいバレたというわけだ。
 


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