適量の孤独 | ナノ


惜しい人材 参


俺はあの日のことを良く覚えている。
敵として現れた大罪人のイタチや、鬼人、干し柿キサメのこと。
そして、緊張状態にあった戦場の中で、まるで敵同士とは思えない会話を繰り広げた女がいたことを。
つい先日、中忍への昇格を果たしたイタチの幼馴染み。

その名が彼女の口から飛び出してきたのである。

「確かにあの子は私たちの所に来たわ。でも、それがナルトとどう関係があるっていうの?」

カカシを起こしてしまうのではと思うほどの紅の声音に、彼女はチラリとカカシへ視線を向けた。
それでもベッドの上で微動だにしないカカシを確認した彼女は、まるでそれが真実だと言わんばかりの説得力を持って語り始めたのである。

「彼女は、数少ない自来也様の弟子の一人です。今でも情報交換のため、連絡を取り合っています」
「それって……」

「えぇ。多分、ナルト君は彼女からの情報を受けた自来也様に匿われているのだと思います」

一息に呟いた彼女は、まるで証明を終えた科学者のようだった。
俺たちが持っている情報だけでは浮かび上がってこなかった、真実に一番近いであろう答えが目の前に提示されたのである。


惜しい。
本当に惜しい人材を失った。

この時の俺は、ナルトの行方や回復に時間が掛かるだろうカカシの心配ではなく、ただ純粋に目の前で情報の共有を行い、切り離しては結合させを繰り返して有力な可能性を提示してみせた、彼女という存在を木ノ葉が失っていることに惜情の念を浮かべていたのである。





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