適量の孤独 | ナノ


惜しい人材 弐


カカシの家に戻れば、そこには待ち合わせ通りアスマと紅が待機していた。
相変わらずカカシはピクリとも動いていないようである。

「お邪魔します」
「沙羅!」

律儀にそう断りを入れて部屋に踏み入る彼女に、紅とアスマは目を見開いた。

「病院で会ったから見舞いにと誘ったんだ」

ビシリとナイスガイポーズを決める俺に、二人は想像通りかくりと肩を落とした。
しかし、俺が彼女を連れてきた真意を直ぐに察したのか、アスマはずりずりと彼女のために椅子を一つ用意したのである。

「奴らの様子じゃあ、まだナルトはみつかってないみたいだな」

此処へ来る道中、彼女にはあの時起こった出来事をあらまし説明していた。
だから暁が狙っている人物がナルトであることも、ナルトの中にある九尾が狙われていることも理解している。
俺の零した言葉に、彼女はカカシの部屋に似つかわしくない綺麗な所作で思考に耽っているようだった。

「…でも、おかしくないか……?あいつら既に里に入り込んでた」

そう。俺もその点については不可解に感じていた。
この木ノ葉の里でナルトを見つけることなど赤子の手を捻るように簡単な筈だ。
なのに奴らはナルトを探している。


「もしかしたら、誰かが匿っているのかもしれません」

「え?」

誰に呟くでもなく宙に放たれた言葉は、その場にいた俺だけでなく、アスマや紅にも衝撃を与えた。
誰かが匿っているとは、どういうことだろうか。

「沙羅、どういうこと?」

紅が彼女の肩越しに問い掛ける。
唇をツーっとなぞり長考する姿は、男という生き物に妙な気を起こさせそうになるほど艶のようなものを感じさせた。
しかし、思考に流す横目がその艶を良い意味で打ち消している。
男が見て美しいと言わしめるだけに留まるような女性の姿だ。

「確証はありません。ですが、この里でナルト君を見つけるのはあまりにも容易い。しかし彼らはナルト君を見つけられてはいない」

彼女の視線がカカシの顔を捉え、そのまま枕元に置かれた写真立てへと写る。
写真の中のカカシは、昔のつんけんしていた時代からは想像も出来ないほど丸くなった笑みを浮かべていた。

「それならば、可能性は絞られてきます。ナルト君が自ら身を隠しているか、または誰かに匿われているか、そのどちらかだと思います」
「確かにナルトが自分から身を隠すって可能性は低いと思うけど、なきにしもあらずじゃないか?何故匿われている方なんだ?」

その問いに、彼女は膝ごとアスマの方へ向け、まるで答案用紙に答えを書くように呟いたのである。

「暁が現れたあの日。私はその人物たちが何者かを知らないまま、ある人物に情報を流しました」
「ある人物?」
「えぇ」

そう言って告げられた名に、俺たちは目を見開くことになった。





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