適量の孤独 | ナノ


敏い弟子 壱


「貴女は……」

往来のど真ん中で立ち尽くした私の前に現れた影。
その人物はこちらの呟きに反応したのか、ぴたりと足を止めゆるりと振り返った。
その表情には、いつも通りゆるりと笑みが張り付いている。

「涼城さん、お久しぶりです。どうしたんですか?」

軽い足取りでこちらにやって来た彼女は、私の知る限り木ノ葉で一二を争う口寄せのエキスパートだ。
そして、数少ない自来也様の弟子の一人である。
本人はいくらも経たないうちに教えを乞うことを辞めたと言っていたが、今も自来也様とは情報の交換を定期的にしているらしい。
彼女も、女将さんの店に来ては私から情報を得る人間の一人だ。
勿論、その逆も然り。
まだ少しばかり幼さの残る顔立ちをしてはいるが、雰囲気は出会った当初から大人に引けを取らないと思っていた。
いつもへらりと笑みを湛え、一切感情の揺らぎを見せない。
しかし、どこか空虚であり、憂いを含んでいるようにも見える時があった。
もしかしたら、何も映さない彼女の瞳に自身の感情を乗せてしまっていたからかもしれない。

自来也様の弟子。

今の私にとって、彼女は救世主以外の何者でもなかった。





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