Obliviator-忘却術士- | ナノ


08-01


その決闘クラブとやらは、大広間で行われるとのこと。
行き交う生徒達の間から、そんな情報がちらほらと聞き取れた。
最も、場所を知らなくても辿り着いていただろう。
なんたって生徒達の波が一カ所を目指し、そんな彼らが浮足立っているとなれば、そこは決闘クラブの会場である。という結論しか出て来ないからだ。

懐かしく思いながら校内を歩いて行くと、あっという間に大広間へ到着した。

「凄い人だかりね……」

覗けば寮を関係無く、そこは杖を持ち今か今かと興奮した面持ちで待ち構えている生徒達でごった返していた。
食事用の長テーブルが取り払われ、金色の舞台が中央に設置されている。
あそこが今回のメインステージのようだ。

そこへ、一人の男が声高々に現れた。
言わずもがな、煌びやかなマントを翻したロックハートである。
妙な脱力感に襲われた。
彼が長々と今回の「決闘クラブ」についての主旨を説明している。
ちゃっかりと自身の著書を宣伝として織り込んでいたことは流石だろう。徹底的にナルシストであるという彼の地位が私の中で上昇して行く。

「では、助手のスネイプ先生を御紹介しましょう!」

辺りがざわついた。
視線の先でロックハートと対になるように反対の段差から上り壇上に姿を現した男は、まさしく大きなコウモリそのものである。

本当に絶賛教師を全う中らしい。

眉間に皺を寄せて顔に険相を張り付けて立っていた。
これでは存在だけで生徒に威圧感を与えていそうだ。
しかし、彼らしいとも思う。
寧ろ彼が笑顔で生徒達に友好的であるという図の方が、気味が悪い気がする。
苦笑が漏れた。
途端、私の体を言いようのない視線が貫いた。
鋭く、不機嫌を全開に表したようなものである。
何かは、直ぐに察することが出来た。

「……」
「……」

彼はきっと、何でお前が此処にいる。
とか、またダンブルドアに謀られたか。
など盛大に皮肉を吐くのだろう。


この視線が語る通り、彼が私の存在に気付いていればの話だが。





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