水魚の交わり | ナノ


01-03



旅を始めた翌日。
阪神共和国滞在二日目。
門出を彩る記念すべきその日。

知恵熱と銘打った病にとんと侵され、私は 1人寂しく布団と戯れていた。



という設定の元、来るべき戦に向けて思考を巡らす為、こうして羽毛に包まれる 1 日を選んだ私。

別段、孤軍奮闘四面楚歌、世の中全てが敵に見えているわけではないが、強ち違うとも言い切れないのが実のところである。


私の感覚で言うなれば、この紙面の中でこれから起きるであろう出来事は、弱っちくなよなよとした生身では到底太刀打ちできないであろう事象で満ちている。

自慢の長い髪の手入れを疎かにして悩まなければならない程度には、その変えようのない出来事、事象、起こり得た事柄に、とんと頭を悩ませることとなる。

そりゃもう、表面漂着さえ出来ない程に回避不可能な、そもそもどうやって逃避すればいいかすら分からないフェノメノンが溢れかえっていた。





つまりはこういうことだ。

私はどうにかして生き延びる策を講じなければならない。

という緊急を要する課題が浮上したのである。

生憎と、歩行と思考を同時に出来る程巧妙で高等な難技を持たない私は、粉物の焼ける芳ばしい香りを前に、ぐっと拳を握り解決策を練ることと相成った。

次いで言うなれば、あの魔術師を発端として起こる質問大会の場に居合わせる心配が無くなり、安堵のため息を漏らしたのは、彼らの背中をひしと見送った後のことである。

実を言うと私、何故此処に私が居るのか、さっぱり、全くもって、ちっとも、見当がついてはいないのだ。

こちらに来る要因であろう出来事はおおよそ、高い確率で、別の要素が入る隙もない程に、アレなのだろう。と、思い当たるものはある。



だがしかし、どういった理屈のうえで私はアレに出会い、どの位の確率をもってしてあの場所へとたどり着いたのか。
その点に関してはとんと見当がついていない。

あの魔女の言葉を徹頭徹尾、一言一句信じるのならば「必然」、そんなたった 2 文字で済んでしまう出来事なのかもしれない。

そもそも二次元の世界に三次元の私がいるのも可笑しな話であり、また私の理解の及ぶ範疇外の出来事であった。






まぁ、幾ら分からないことを無闇に探っても良い結果は得られない。

今現在考えあぐねている現象は、私の知識だけでは到底解答に辿り着けるはずもなく、さらには解決するための力すらないために、今こうして、ここにいる現実がある。
つまりは、私が考えてもどうしようもない出来事だったりする。


過ぎたるは猶及ばざるが如し。
ここは一つ、閑話休題として別の問題へと目を移すべきなのであろう。

そうすることが、今私のすべきことであり、しなければならないことであると考える。


と、格好をつけてはみるものの、考えなければならないことがありすぎて、何から手を付ければ良いのやら。

取り敢えず考えるべきは、新しく顔見知りとなった例の仲間への接し方だろうか、それとも仮病がバレた時の洒落を効かせた言い訳だろうか。

殺伐とした部屋に於いて唯一煌めく黒い髪が、パサリと肩から垂れ落ちた。



少女、悩む。





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