01-02
芳ばしい香りが漂う国、阪神共和国。
その何処とも知れない道中の、何処とも知れない下宿屋に、これまた誰とも知れない者同士、肩を寄せ合い語り合う姿はなんと珍妙なことだろう。
姿形も違えば、服装も違う。
あの白い生き物がいなければ、飛び交う言葉さえ違ってくる。
けったいで変ちくりん、一風変わった奇々千万な一行である私たち。
その中で唯一まともだと信じてやまない私であるが、どうも私が私の常識及び希望的観測に則って、私はまともだとした場合、どうやら可笑しいのはこの世界或いは今起こり得ている事象ということになる。
それはそれでどうしたことか、中々に愉快な発想であることに変わりはないが、中々にどうしたことか、一般的答案で採点するのであれば、どうやら高得点は望めない回答であることに、甚だ疑問の余地もないだろう。
否。
不満なら両手に一杯、バケツに二三杯、土嚢を四五袋作れる程度には抱え込んでいる。
しかしその不平不満が飛び出してこないのは、あまりに理解の及ぶ範疇を超えた事象が、悠々と目の前を闊歩しているからであった。
名など等に知っている彼等は、どう見ても忍であり魔術師であり、砂漠の姫であり、その民である。
そうして、どうも西の大都市にしか見えない窓枠の外のそれは、巧断なるモノが存在する似て非なる世界であった。
どうやら漫画の中に来てしまったようである。
そう理解する為の切欠を掴んだのは少しばかり前のこと。
あの凄艶なる魔女を見た瞬間。
次いでその事実を受け入れたのはつい先程のこと。
滞りなく働いていた口が、急に空を噛んだ瞬間。
支払った対価の意味を理解して、ようやっと上記の事実に気づく。
とんでもないことになってしまった。
しばし呆然。あんぐりと口を開け、文字通り言葉が出ない事実に唖然とした。
来てしまったものは仕方がない。
そう諦められる時期が来る為に、私はあと何個の世界を渡り歩くことになるのだろうか。
あまりにも膨大で莫大。
地の底をとことん這った絶望的事柄を前に、暫くは豪雨雷雨が私の中で轟くのであろう。
とまぁ、とかく最重要項目としてまず片付けるべきは、会話をぷつりと止めた私に降り注ぐ訝しげな視線を、どうにか躱すことである。
引き攣る笑みでは見逃してはくれないこれからの仲間は、中々に個性的で厄介な面々であることに、疑問を浮かべるまでもなかった。
旅が始まる。