小説 | ナノ


曜日の偶然



背の高い学生。



160cmをぴったりに数える人間からしてみたら、彼は頭一つ分抜きに出ていた。

そんな程度の認知。




そんな彼と私が顔を合わせるのは、バイトを入れている火曜日だけ。
丁度サラリーマンやOLの帰宅ラッシュが途絶える頃合だ。
いつもプリン頭の子と共に来店する。
雑誌コーナーを横目にふらりと店内を一周する頭一つ。
奇妙なトサカ頭の彼が首だけを棚から覗かせ店内をウロウロする様はちょっとしたホラーだ。

そして、決まって栄養食品コーナーで立ち止まる。

最近店内の模様替えをしたため、その様子が良く見えた。




「研磨ー」



そう言ってゲーム雑誌コーナーで雑誌をペラペラと捲るプリン頭を呼びつけた。

どこか温度の低そうな彼に構うことなく、トサカ頭の彼はどれが良いかと栄養食品を吟味していく。
それこそダイエット食品や女性の健康サポート食品など多岐にわたっていた。
「どれでもいいよ」というプリン頭の淡白な答えもなんのその。
「それじゃぁ、でかくならねーぞ」と買い物かごにポイポイと栄養食品を放っていくのだ。
まるで親鳥が雛鳥に嘴で餌を与えるように。

その姿は他のお客様のレジをしたり商品の陳列をしたりと案外忙しいコンビニ店員である私が、毎週火曜日唯一楽しみにしている光景であった。





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