華ヤカ哉、我ガ一族 | ナノ

前文 華ヤカ哉、我ガ一族
御杜守著抜粋


帝都の中心で光輝く一族があった。
それは一代で築き上げられた財の上に成り立ち、酷く脆い土台に見えながらも実の所非常に頑丈であり、どんな災害にも揺るがない。
我輩はその一族をいつしかこう呼ぶようになった。
華やかな一族、と。
華やかな一族は自らも光を放ち、この暗き帝都を照らしている様に見えた。
闇夜に点る光、そこに群がる者の姿は、醜き蛾の様にも見え、時には甘き密に群がる蝶の様にも見える。
一族の長は幼き頃より貧しく、親の営みし店を乗っ取るや否や見切りを付けてそれを捨てた。
捨てたのは店だけではない。
生まれ育った家、そして自分を育てた親も捨てた。
彼の中には現在(いま)と未来(これから)のみ。
過去(おもひで)を切り捨てる事で道を作り、ついには帝國の名だたる財閥の長となる。

抜粋『華ヤカ哉、我ガ一族』著:御杜守





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