花骨牌 | ナノ

讐者


「最も親しい友を殺すこと」


彼奴の声が、何十回と脳に囁いてくる。

殺したくば万華鏡写輪眼を手に入れろ。

もう聞き飽きた。



強い雨で思考が鈍る。
今はそれが丁度良かった。


今頃ナルトはどうしているだろうか。
きっと倒れているのを誰かが見つけるのだろう。
終末の谷に置いて来た友の名を思い出す。
あの時、俺はナルトを殺せなかった。

ナルトを殺せば、彼奴と同じ力が手に入る。

彼奴を殺すだけの力が。

それでも、果たせなかった。


「サスケは甘いね」

そんな俺を笑う声がした。

「選べるのは一つだけ」

里を抜けた今でも、どちらかを選べずにいる。
里を抜けた今でも、ふとした隙に仲間の顔を思い出す。
それを責め立てるかの様に、彼奴等の声がする。
まるで、あいつを殺せと促しているみたいだった。

最も親しい友を殺すこと。
そんなこと。

そんなことをしなくたって、俺は。



「俺は、俺のやり方で力を手に入れる。俺は、俺のやり方でアンタを越える」

万華鏡写輪眼がなんだっていうんだ。

俺はそんなものに頼らなくたって、彼奴を。
彼奴を殺してみせる。

必ず。

強く降りしきっていた雨は、何 時の間にか止んでいた。
周りからは何も聞こえない。
ずるずると動かす俺の足音だけが、その場に木霊しては消えて行った。

俺は、言いなりにはならない。





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