花骨牌 | ナノ

任務


朝っぱらから綱手様に呼び出されて、一体何の用だと欠伸を噛み殺して向かえば、告げられた内容にただただ驚いた。

何せ突然のことだったし、顔見知りの中からそんな奴が出るとは思いもしなかったからだ。



うちはサスケが里を抜けた。

その事実に驚き、呼び出された理由を悟る。
しかも厄介な事に、誘導役としてサスケを手引きしている者がいるかもしれないらしい。
敵がいるかも分からない中で、いたとしてもどれ程の強さを持つ忍かも分からない。
最悪な事に今回の任務に割ける中忍、上忍はいないときた。


おいおい、中忍になっての初任務がこれかよ。
そう思う反面、やらなければという使命感と義理立てが、俺を動かした。
急き 立てられるように火影室を出ると、先程まで眠気に負けていた思考がクリアに動き出す。


さて、誰を連れて行くか。
綱手様からのご指名であるナルト、俺との連携がとりやすいチョウジは確定。
連携という意味ではイノも連れていきたいとこだが、今回はサスケ絡みだからパス。
後は、索敵や情報収集に向いた感知タイプを連れていきたいところだな。

サスケとの仲はそれ程良くねぇし、個人的には是が非でも連れ戻したい相手じゃない。
けど、アイツは木の葉の里の忍だ。
そんでもって、仲間だ。

今回はめんどくせーとか、だりぃとか、そんな事言ってる暇は無さそうなんだよな。
里の仲間がピンチだったら、助けない訳にはいかないだろう。
俺は、その仲間の助けで一度命拾 われてんだ。

頭を過ったのは中忍選抜本戦のあの時。
もしあの時、アスマ先生が来なかったら。
紅葉さんが呼び寄せてくれた熊がいなかったら。
出来れば思い出したくもない恐怖にぞっとした。



「そういえば、紅葉さんは」
ぶるりと身を震わせてから思考を無理に別へと向ける。
そして今この時に、紅葉さんが木の葉にいないことを惜しんだ。
火影室からの去り際、問うた質問に綱手様から貰った返答を思い出し、今更ながら落胆する。

聞けば彼女は数日前から砂の里へと任務に行ったらしい。
ったく、なんてタイミングの悪さだよ。



もし昨夜、彼女がいたなら、サスケを止められたかもしれない。

もし今日、彼女がいたなら、サスケを連れ戻す切札として、また心強い仲間として班に組み込めたかもしれない。

アスマ先生が、彼女を口寄せのスペシャリストだと言っていた事から、きっと感知に優れた口寄せ動物も呼べるのだろう。
思わず舌打ちをしたくなる程度には惜しい存在が、今ここに居ない事実に少しの動揺を覚えた。



まぁ、いないもんはしょうがない。
出来る限り最良と思われる班編成をして出るしかないだろう。
今回の任務、高い確率で援護は望めない。
何せ中忍になりたての俺に任務が回ってくる程なのだから。


つまり、

今度こそ、

誰かが助けに来てくれるかも しれない という希望は持たない方がいい。

本戦の時みたいに、都合良く援軍が来るなんて考えない方がいい。
アスマ先生も、そして紅葉さんも、今この里にはいないのだから。


走って辿り着いたナルトの家の前。
戸を叩く前に大きく息を吐いた。
小隊長として命を預かる立場にいるという状況が、想像していたより遥かに重く、
そんでもって、中途半端に投げ捨てていいものじゃないことだけは、自覚した。





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