花骨牌 | ナノ

わる距離


「ほら、言わんこっちゃない」

サスケが木の葉病院に運ばれた。
左手首と肋骨、特に精神に強いダメージを受け、何時起きるかは分からない状態らしい。

修行場で別れた後、カカシの家へと赴いたサスケは、そこでイタチが近くにいる事を知る。
しかし再会したものの、呆気なく返り討ちにされた。
そんなところだろう。



ベットで眠る幼馴染みを前にしても、そんな冷静な判断をくだせる自分に苦笑した。
いつからこんな性格になってしまったのだっけ。

「紅葉、お前の口寄せで治してやれんのか」

「無理ですね」

サスケが運ばれたと知らせに来てくれ、何故かそのまま一緒に見舞いに足を運ぶこととなったガイの問いに即答する。

「カツユ様を呼び出せれば良かったんですけど、契約していませんし」

自来也さんとうずまきナルトが追っているという伝説の三忍の一人を思い浮かべ、次いで紅一点の彼女に付き従う巨大蛞蝓を思い出す。

あぁ、失敗したな。
今からでも契約しに行こうか。
そう思う程度には後悔していた。

ただ、カツユ様を呼び寄せるには莫大なチャクラが必要だった。
呼び寄せを得意とする私にとって、その呼び寄せの対価となるチャクラを効率的に消費していくことが、より重大な課題であり、大前提でもある。
つまりは、カツユ様はその対価とを天秤に掛けた際、私には扱い兼ねる口寄せ動物だったのだ。
加えて言うならば、医療知識を持たない私が有効的に使えるかと問われれば、言うまでもなく否であったことも、理由の一つであった。


「獏がいただろう。あれは確か、悪夢を吸うんじゃなかったか」

「御伽噺に出てくる獏はそうですね」

「吸わないのか?」

「吸いますよ」




肉体ごと、で良ければですが。


未だにカツユ様への後悔を引きずりながらも、ガイさんを少しばかりからかう。
ゴクリと大きな眉を歪めながら唾を飲み込む姿に、思わず笑いそうになった。


「自来也さんが連れてきてくれるのを待つしかないでしょうね」

あの三忍の一人を。
そうすれば、サスケとカカシさんは直ぐにでも良くなるだろう。
ガイさんのお弟子さんも、きっと。



「そうだな」

やはり想うのは大切な弟子の姿なのだろうか。
何時になく真剣な眼差しで頷くガイさんに、言い知れぬ羨望を抱いた。
そこまで弟子を思いやれるのは、きっと彼にとってその弟子がとても大切だからなのだろう。


深く眠るサスケ。
ただ見つめるだけの私。

二人の距離がやけに遠く感じてしまったのは、
私が変わってしまったからなのかもしれない。





next