絵本(※一次を含みます)

鹿児島中央駅に複合されているアミュプラザ鹿児島。

九州新幹線一部開通に少し遅れる形で開業したそこは県外からの観光客のみならず、地元からの集客にも成功し、鹿児島経済界に変革をもたらした『黒船』と呼ばれる存在である。




これはそこでの何気ない日の出来事。




4階『MODERN LIFE FACTORY』と称されるフロアには書店、CDショップなどのカルチャー、料理教室などの自身を高めるためのブースまであったりする。

その中の一つ、『紀伊国屋書店』の店内に一際目立つ存在がいた。

綺麗にセットされた漆黒の髪、ほっそりと見えるが精悍な横顔、鋭い眼光を更に引き締める眼鏡。

真新しく仕立てあげた白いYシャツを着こなし、脱いだであろう常盤色の上着を左腕に掛けた男性。

まさに『出来る男』を体現したような男性は違う意味で周りの注目を集めていた。

例えば、男性が経済学や哲学、外国文学書籍のコーナーに佇んでいればあまりのベストマッチに感嘆のため息は漏れていたであろう。



が、奇しくも男性がいるのは可愛いキャラクターのイラストひしめく『えほんコーナー』

そんなところで真剣に悩む男性の姿に周囲はどう反応したらいいか考えあぐねていた。

淡いパステルの色彩に男性はとてつもなく浮いていたのである。

男性客からは奇異と羨望の眼差し、子連れの奥さま方は子供そっちのけで想像と妄想の井戸端会議を始め、独身女性たちは声を掛けようかと思い悩む周りの異様な熱気にも動じることなく男性は絵本を吟味していた。


「とうさまー」

そんな空間の中を男性の元に一目散に駆け寄る幼い子が二人。

『とうさま』と呼んだ衝撃と、二人に気づいた男性の思いもしなかった柔らかい笑みにあるものは声にならない悲鳴を、あるものは黄色い声を上げた。



勢いよく抱きついてきたさくらをかかえ、九州はつばめの頭を撫でる。

「よくここだとわかったな」

「朝父上が絵本のことでレディに相談していたようだったからきっとここだろうと思った」

「流石だ」

再び頭を撫でてやるとつばめは嬉しそうに頬を赤らめた。

抱き上げられてご満悦のさくらは明るい声で九州に問うた。

「さぁたちのえほん?」
「そうだ、今あるのはだいぶ読み込んでしまったから新しいのを選んでいたのだ。つばめそこの二冊を持てるか」

こくんと頷いたつばめは二冊の本をしっかりと抱えた。

「…しんかんせんのようだが、山陽ではないな。どこのデザインだ?」

「北のものだ。あちらの新幹線がモチーフなのは解せんが仕方ない。実物は機会があれば二人にも見せてやろう」

「…つばめが一番に決まってる」

「だとーほんしゅー☆」

「はっ!つばめもさくらも頼もしいな。流石は九州の子だ」

仲睦まじい親子の会話(?)をしつつ、3人はレジへと向かっていった。


残された人々は思い思いの妄想を未だに繰り広げている。

さて、人々が彼らの存在をしるのはいつのことになるやら…。



☆終わり




子煩悩なつばめ様はきっと二人に絵本を買ってあげそうだなぁという妄想からうまれました(笑)

つばめちゃんとさくらちゃんは今上げている1次とは別です。

つばめちゃん(5歳)
さくらちゃん(3歳)なイメージで新たに書きました。

つばめ様の呼び方は最後まで悩みましたが一応父親ってことで(笑)

絵本コーナーで真剣に悩むつばめ様って素敵じゃありません?(同意を求めんな)



ちなみに購入した絵本は「しんかんくんうちにくる」と「こんとあき」

しんかんくんは明らかにE4ベースですもんね(笑)

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