少年は出会った 2
焔が先程いた道に二人の人物が歩いていた。その内のフードを深く被った一人が立ち止まる。
「あ……」
「ん? どうしたの、風ちゃん」
もう一人の人物も立ち止まり、声をかけた。黒に少し青が混ざっている髪を一つに纏め、下の方で結んでいる青年。間違えて女に見えてしまう、顔立ちをしている。 風と呼ばれた少女は、指を差す動作をして、ぽつりと呟いた。
「あそこ……あそこに風たちと同じ人がいるよ……菖蒲にぃに」
「えっ!? それ本当?」
菖蒲と呼ばれた青年は、驚き、風に問う。風は静かにこくり、と頷いた。
「あそこって……神社?」
指を差している先を目で追うと、大きな鳥居がある神社だった。
「じゃあ、早速行ってみようか」
確かめるため、風の手を掴むが、風の手は震えていた。その瞬間、周りの空気が異質なものへと変わる。皮膚に触れる空気の温度が一気に、周囲の明度が突然変わった。 菖蒲は、風が震えている原因を見る。そして、問い掛けた。
「……何か用ですか? 封」
『用がないなら、来ちゃいけないって訳? ふ〜ん』
その声に答えたのは、風ではない幼い男の子の声。風の背後に現れた少年。彼女の背後に影のように寄り添っていた。 風とよく似た顔立ち。しかし、背景に溶けてしまうほどうっすらしたもので、詳しい顔形は分からない。苛々しているような表情であることは判別できた。
「別に、そんな事は言ってないですよ。ただ、用件を伺おうかと思っただけです」
『……相変わらずムカつく口調。ま、いいや。可愛い風が"それ"を見つけてくれたし。しょうがない。不本意だけど、教えてあげるよ』
封は肩を竦めると、菖蒲に言う。
『風が言ってた"それ"と一緒に、"あいつ"もいるよ? "それ"はまだ覚醒してないみたいだから、早く助けなくちゃ、死んじゃうかもよぉ〜』
あははは、と笑う封に対し菖蒲は険しい表情をした。
「それじゃあ、早く行かないと。風ちゃん、行くよ!」
菖蒲は風の手を握り、走り出す。風も頷くと転ばないように菖蒲の手を握り、走り出した。
□
「………っ」
あれから、どの位時間が経ったのだろう。今は、大きな石の後ろに隠れている。 焔を襲ったそいつから攻撃はされていないが、直に見つかってしまう。 呼吸を整える。 荷物はここに隠れる前に攻撃で袋が破れてしまったので、その場に置いてきた。
(まさか、俺がこんな目に遭うとは思わなかった! けど、"あれ"が原因だったのか……)
焔は、心の中で呟く。
(けど、何だろう、あれ。人間ではないし……妖怪?)
考えたら、背筋に虫酸が走った。焔は頭を軽く振ると違う事を考え始めた。
(先ず、ここから脱出する事を考えなくちゃ! どこかに出れるとこないかな)
一人悩んでいると、後ろの石からみしっ、と音が聞こえた。
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