△ ロスマリナス 14
分かってます、
と小さい声が忘れかけた頃にやっと聞こえた
少し震えているようだった
…こういう場面は得意ではない
泣き出して終わりかと思い立ち去ろうと思っていたが
不意に、振り絞るような声がした
私を助けてくれるなら
もう一つだけお願いがあります、と少し俯き気味に
それでもしっかりと口にした
帰ってこないのも分かっています
それでも私は…まだ、動けない
壁外に行ったら
彼を
私の元に連れて帰って来てください、
と声色だけは気丈に言うが、その頬には一筋涙が流れた
こんなに感情的になったところを見たのは初めてだった
涙を隠そうともせずに、彼女はそのまま続けた
…出来なければ、
もう二度と私の前に現れないでください、と
最後にもう一度だけこちらを見上げた