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 ロスマリナス 13

半ば睨みつけるように小さく眉を寄せてこちらを見上げるその瞳

歪んだ顔も悪くないと思ったことには気づかないふりをする


…特に意味はない、その思いを隠すように口を開いた
あんたみたいな若い女が死んだら目覚めが悪いと思っただけだ、と言葉を続ける


進んで女に興味があるわけではない自分がこう思うのであれば
その辺の男どもはどうなるのか

この間は地下街に行かなかったから助かったものの
もしこの顔を覚えている奴がこの家を突き止めたらどうなる?

言い寄ってくる男たちをやり過ごしたところで
そんなことを続けていれば逆恨みした奴が何をするかも分からない


あの夜馬車で連れ去られそうになっていたことを思い出していた


いつ見てもこの女は一人だ

身の安全や将来を考えた方がいい
いつまでも自分が助けられる保障などない

若い女が一人で暮らすなどこの街ではあまり良く思われない

この容姿では更に苦労することが目に見えている


…一人でいるのには理由があるのか?

そう思い当たって、すっかり忘れていたこの女の以前の恋人の話をやっと思い出した

壁外で、死んだと言ったな
そいつも調査兵団だったのか


……、

あんた…ずっとこの生活を続ける気か、と考えは口をついて出ていた


昔の男が忘れられないのかも知れないが
そろそろ嫁ぎ先を考えたらどうだと説明もなしに続けていた

その言葉に、スカートを握りしめていた女の手がびくりと反応したのが見えた
彼女は黙り込んで、言い返せないようだった



…そんなにまだ忘れられないのかと、思った



  


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