×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


 アリビンゲーブ 48

「−−−エマ!」


開いた扉はそのまま横の壁へぶつかり、バン!という大きな音と同時に誰かが振り返った。

物置小屋は奥に長く作られているようだ。

薄暗い中で、振り向いたのはたった一人。
そいつは中腰の姿勢だったので、こちらを振り向いた時に長い髪がさらりと肩を滑ったシルエットが見えた。


−−−長い、髪。


「…エマ、か?」

「兵長…?なんでここに…」


「お前……」

そこで、ようやく彼女が何かを手にしているのが分かった。
目が慣れてきた薄暗さの中で、その手の先に目をやると男の襟元だった。

エマはリヴァイを見ると手元を緩め、そこからずるりと男が解放される。

これにはさすがのリヴァイも面喰ってしまった。

ぴくりともしないその男は完全に伸びているようだ。

…兵士は二人いたはずだ。
小屋内を見渡すと、そう遠くない場所でもう一人うつ伏せに倒れていた。


「…」


足元には欠けたブレードも落ちている。
コイツがやったのか…。

途端に肩から力が抜ける。

俺は自分の部下を甘く見過ぎていたようだ。
この状況に思わずほっとする。

靴で床を軋ませ、エマの方へ向き直る。
華奢な肩がびくりと震えた。
右手でその細い首を掴み、温かい鼓動を確認する。

なんにせよ…

「無事だな…」

やはり、守られるだけの女ではないのか。
最初からコイツの反抗的な態度は気に入ってはいたが…
全く、頼もしい限りだ。

するりと手を首の後ろに回し、そのまま固定する。

「へ、兵長…?」

僅かな抵抗なのか、伸ばされた俺の手を両腕で掴む。
軽々と持てそうな程小柄な癖に。
ぐっと引き寄せると、いとも簡単に身体が近づいた。
嫌ならば、俺にも反抗すればいい。


「…っ」


抵抗は、されなかった。
その代わりにまたあの香りが鼻を掠める。
くらりと、そのまま溺れてしまいたくなる。
そのまま強引に唇を奪うと、微かに血の味がした。


「!…お前、何かされたのか」

「い、いえ、特には…」


そう言葉を交わしていると、外が俄かに騒がしくなった。
大方エルヴィンの手配した兵士達だろう。

「…行くぞ。後はあいつらの仕事だ」

エマの手を引き外へと出る。
雨はまだ小さく降り続いていた。

丁度鉢合わせた兵士に小屋で伸びている憲兵の拘束を指示し、足早にその場を後にする。
兵士達は手を掴まれたままのエマを気にしているようだったが、そんなものは痛くも痒くもない。


…コイツはかなり見られたくなかったようだが。



  


Main>>home