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 アリビンゲーブ 41

完全に開ききった扉をくぐっていく列に続き、私も壁内へと入っていく。

…ざわ…
……

いつものように不自然に静まっていく群衆。
人々が連なる道を抜けて兵団本部へと歩を進めていく。

市民の顔には其々畏怖と猜疑心を抱いた表情が浮かび、複雑そうな面持ちで私達を見つめている。
声を潜めて呟いているのは少なくとも賛辞の言葉では無い。
時折面と向かって意見をぶつけてくる者もいるが、その矛先は主力部隊へと向けられていて、団長や兵長を尊敬する兵士達にとっては聞くに堪えないものだったりした。

街を通り過ぎ、兵団本部の裏に設けられている厩舎へと班ごとに馬を戻しにいく。

班員が欠けた事と疲労もあって皆必要最低限しか口を開こうとはしない。
自分の馬に水を与え、厩舎に繋ぎながら、隣の空いたままの鎖を見つめて手を止める。

命を落としてしまった班員は馬共々還ってくることはもう無い…。
つい今朝方共にこの地を出発したというのに、彼らと私の違いは一体どこにあったのか。

どんなに考えても答えは出ない。

自分の精神が参らないようにどこかで考えることを放棄し、都合のいいように解釈してしまいたくなる。
亡くなった彼らを惜しんでいるのに、生き残れてよかったと安堵している自分がいて、心底自分を軽蔑する。

兵長は戦いの中で私達部下の命を守ろうとしてくれたのに、私はまだ巨人と対峙することすら恐怖してしまう。
今の自分に出来ることといえば彼らの死を無駄にする事がないように、前進し続けることだけだ。

なんて自分は小さい存在なんだろう。

…なんて、私は弱いんだろう。



  


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