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 アリビンゲーブ 23

ぎい、と不意に聞こえた扉の音に慌てて身を起こす。

「あ…。」

寝ぼけ眼で兵長と目が合う。
廊下からの明かりで顔は見えないが、きっとあの眉間に皺を寄せた表情だろうと想像する。

わ〜っ!
完璧に寝てた!
帰ってくる前に出て行けば良かった、
勝手に部屋に入って怒られるかも…!


「…来てたのか。」


だが、意外にもその声は静かなものだった。
拍子抜けしている私の前で兵長はいつものように書類を机にまとめ、ジャケットを脱ぎ、襟元を緩めている。

ふと時計に目をやると、真夜中だった。
ぎょっとして兵長の顔に目をやると、やはり大分お疲れのようだ。

机の上の書類も、心なしかいつもより多い。
壁外調査に向けて忙しいのだろう。私がいてはゆっくり休めないだろうから、今日は来るべきではなかったな。


「兵長、お疲れのところすいませんでした。じゃあ私、失礼しますね。」

「ん?…ああ。」


しゅる、と音がして兵長が答える。上半身裸のシルエットが見えたので慌てて扉に手を掛ける。
まだ彼の裸は見たことがないので、目のやり場に困る。

「…いや、待て。」

いままさにドアノブを回そうとして振り返る。

「はい?」

見事に鍛えられた肉体が目に入る。薄暗い照明の中に浮かび上がる彼は彫像のようだ。

「やはり、今は駄目だ。今日は泊まっていけ。」

彼はこちらを振り返ることなくそう呟いた。
またこの人は意味の分からないことを言う。

今はだめ?
なにが?
いつならいいの?

「泊まるって…」

「一緒に寝るのが嫌なら椅子で寝ても構わんが。」

寝れるならな、と付け加えた彼は涼しい顔で浴室に向かいながら、
私に簡易な服を投げてよこす。

「外服は汚ねぇからな。着替えろよ。」

何だか良く分からないが彼がこう言う以上従うしかない。

サシャには突っ込まれるかも知れないが、宿舎には明日の朝一番に戻ろう。
ブーツを脱いでからのろのろと用意された寝衣に着替え、編んでいた三つ編みを解くと彼が部屋に戻ってきた。

柔らかい素材の寝衣を下だけ身につけ、上半身はまだ裸だ。

まさか、それで寝るのか。



  


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